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【大学野球】チームの空気を変える力のある右腕 指揮官が「成長度という点で一番」と評する塩野目慎士

 

貴重な経験を積む秋


立大の3年生・塩野目は溝口監督によればこの夏、最も成長した選手だという[写真=矢野寿明]


 努力は必ず、報われる。

 立大の144キロ右腕・塩野目慎士(3年・足利高)はこの秋、貴重な経験を積んでいる。

 慶大との開幕カードで、立大・溝口智成監督からの「信頼」を得た。1回戦では2対3の8回裏から救援して、三者連続三振。2回戦では二番手で1対2の4回表から2イニングを打者6人、パーフェクトに抑えた。立大は4回裏に一時勝ち越す(3対2)も、後続の投手が粘れず、慶大に連敗(7対11)した。

 立大は法大1回戦も落として開幕3連敗。溝口監督は2回戦(9月17日)で、塩野目にリーグ戦初先発を託した。起用の理由を語る。

「過去2試合を見て、一番、スタートで試合をつくってくれる可能性がある、と。そうは言っても、先を見てやれる投手ではまだありません。1イニングずつ、力を振り絞って投げる。3回で5安打。スイスイ行っていれば、もう1イニングも考えましたが、(打者)2〜3巡目のところで、どうかと……。3回まで行けば御の字だと思っていましたので、ゼロによく抑えました。(夏場のオープン戦から)信じてやってきた後ろへつなぐ継投でしたが、うまくいきませんでした」

 毎回、安打を許しながらも、得点は許さなかった。3回で55球。3回裏の第1打席を迎えたところで、代打を告げられた。立大は4回から二番手以降の投手陣が踏ん張れず、0対7で開幕4連敗を喫した。身長181センチからキレのあるボールを投げ込む塩野目は言う。

「溝口監督が言われたように、自分は長い回より、1イニングずつを抑えることを考えていました。結果、無失点でしたが、攻撃にリズムを与える投球という意味ではまだまだです。この2カードで真っすぐで空振りを取れたり、差し込んだりして、手応えを得ました」

次期エース候補の期待


 足利高時代は先輩投手の故障により、2年夏から主戦も、栃木大会1回戦(対国学院栃木高)で敗退。エースとして臨んだ3年夏も同1回戦(対宇都宮工高)で敗退した。ともにスコアは0対7の7回コールド負けと、無念ばかりが残る高校3年間だった。

「高校の先輩が立教で活躍していた姿を見て、自分も東京六大学でプレーしたいと思いました」。慶大入試にもチャレンジしたが合格できず、1年の浪人を経て、立大の門をたたいた。

 下級生時代は2年生以下で編成するフレッシュトーナメントで経験を重ね、3年生の今春、明大2回戦を五番手でリーグ戦初登板。だが、明大の主将・上田希由翔(4年・愛産大三河高)に2ランを浴びるなど、1回1/3で3失点とほろ苦い神宮デビューとなった。

 同じ失敗は繰り返さない。夏場は誰よりも汗を流し、溝口監督は「成長度という点で一番、伸びた選手」と開幕からベンチ入り。目立った実績がない高校時代から、地道な取り組みで、立大投手陣に欠かせない存在となった。

「3年間、やってきたことが形になった」

 尊敬する先輩は1学年上の右腕エース・池田陽佑(4年・智弁和歌山高)だ。年齢は一緒だが「池田さん」と呼ぶ。「部屋が同じだった時期があり、練習の取り組み方、時間の使い方を学びました。池田さんみたいになりたい」。

 この秋が終われば、あこがれの先輩は卒業する。塩野目が次期エース候補として期待されるが「その気持ちで頑張る」と決意を語った。溝口監督は法大2回戦後「優勝を目指してやってきましたが、厳しいでしょうが……残り3カード、『立教は元気あるぞ!』と、戦っている姿から、見ている周りの人に、気持ちやオーラを感じていただけるような戦いをしていきたい」と前を向き、神宮をあとにした。

 打者に向かう姿勢。塩野目には、立大の空気を変える力がある。連敗脱出へ、溝口監督が求める「気持ち」を前面に出すピッチングが、チームにリズムを与えるはず。第1、2週と勝ち点を落とした立大の次カード、は第4週の明大戦。塩野目にとっては、洗礼を浴びた春の屈辱を晴らす場となる。

文=岡本朋祐
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