昨年のセ・リーグは
阪神が投打で圧倒的な強さを見せ、18年ぶりのリーグ優勝。日本シリーズでもパ・リーグ3連覇を飾った
オリックスを4勝3敗で撃破し、38年ぶりの日本一に輝いた。「打倒・阪神」に燃える5球団はチーム力を高めるため、戦力補強に動いている。チーム編成は現在進行中だが、現時点でどの球団が効果的な補強を敢行できているか。Bクラスからの巻き返しを狙う巨人、中日が高得点に。野手の大量補強に動いた中日は「台風の目」になれるか。
阪神は現有戦力で戦える自信
・阪神 75点
※昨季成績85勝53敗5分 優勝
FA市場で静観し、トレードの補強にも動いていない。現有戦力で戦えるという自信の表れだろう。補強した選手は救援で期待される
ハビー・ゲラ、現役ドラフトでオリックスから加入した
漆原大晟のみだ。2018年オフにオリックスから
西勇輝を活躍して以降はFA補強に動かず、生え抜きの選手を主力に育成する方針に重点を置いている。ドラフトでは1位・
下村海翔、2位・
椎葉剛、5位・
石黒佑弥、6位・
津田淳哉と即戦力の投手4人を獲得できた。見栄えのする補強には動いていないが、退団する主力選手もいない。チームは成熟期を迎えており、今年も圧倒的な優勝候補であることは間違いない。
・
広島 65点
※昨季成績74勝65敗4分 2位
中心選手だった
西川龍馬がオリックスにFA移籍。替えの利かない選手だけに痛手であることは間違いないが、広島は若手の野手が育ってきた文化がある。
末包昇大、
田村俊介ら成長株が一本立ちできるか。新外国人選手で期待されるのは、
マット・レイノルズと
ジェイク・シャイナー。彼らが中軸で機能すれば得点力がグッと上がる。ドラフト1位の
常廣羽也斗を筆頭に新戦力の大卒4投手は1年目から即戦力で期待できる。西川の人的補償で、オリックスから高卒2年目の
日高暖己を獲得。阪神と同様に長期的視野でチームを構築するビジョンが見える。辛めの採点となったが、「育成の広島」で着実にチーム力をつける。
・
DeNA 65点
※昨季成績74勝66敗3分 3位
今永昇太がポスティングシステムでカブスに移籍。救援の屋台骨を支えた
エドウィン・エスコバー、2度本塁打王を獲得した
ネフタリ・ソトが退団した。FAで去就が注目された
石田健大、
戸柱恭孝は残留したが、今永とエスコバーが抜けた穴は大きい。新外国人左腕の
アンソニー・ケイ、三振奪取能力が高い
ローワン・ウィック、190センチ右腕の
アンドレ・ジャクソン、
ソフトバンクから加入した実績十分の
森唯斗、
ロッテから現役ドラフトで補強した元ロッテの
佐々木千隼ら新戦力の活躍に期待したい。ドラフト1位の
度会隆輝の活躍も打線のカギを握る。昨年度の戦力と比べて厳しい採点となったが、最大の注目は
トレバー・バウアーの去就だ。先発の大黒柱が残留すれば、補強採点簿は70点以上にはね上がる。
巨人は効果的な戦力補強
・巨人 85点
※昨季成績71勝70敗2分 4位
かつてのようにFAで他球団のスター選手を獲得する派手な補強策は敢行していないが、弱点をカバーする効果的な戦力補強でチーム力の底上げを図った。近年の不安材料である救援陣強化に向け、
近藤大亮、
高橋礼、
泉圭輔とパ・リーグで実績のある選手たちをトレードで獲得。現役ドラフトでも阪神のリリーバー・
馬場皐輔が移籍し、同じく元阪神の
カイル・ケラーを獲得するなど徹底している。ドラフト1位の
西舘勇陽、2位の
森田駿哉も救援で起用される可能性があり、チーム内の競争は熾烈だ。野手で期待されるのはドラフト5位の
佐々木俊輔。俊足とパンチ力を兼ね備えており、中堅の定位置を勝ち取れるか。
・
ヤクルト 70点
※昨季成績57勝83敗3分 5位
2年連続リーグ連覇から昨季は5位に低迷。パ・リーグを代表するリードオフマンとして活躍した元
楽天・
西川遥輝の獲得は、故障で稼働できなかった
塩見泰隆も刺激を受けるだろう。救援陣の強化でソフトバンクを退団した
嘉弥真新也を補強できたことも評価できる。さらに、新外国人投手で
ミゲル・ヤフーレ、
ホセ・エスパーダ、
西武から
宮川哲をトレードで獲得。ただ、先発と救援共にまだまだ選手層が薄い。先発要員はFAで
山崎福也(
日本ハム)、石田健大(DeNA)の獲得に動いたが実らず。打線の破壊力はリーグ屈指だけに、今後も投手陣の戦力補強を敢行する可能性がある。
・中日 80点
※昨季成績56勝82敗5分 6位
打線強化に向けた積極的な補強が実現し、
立浪和義監督も手ごたえを感じているのではないだろうか。打点王を3度獲得した実績を持つ元巨人の
中田翔を獲得できたことが一番のプラスアルファだろう。さらに、
上林誠知、
中島宏之、メジャー通算40本塁打の
アレックス・ディカーソンを補強したことで選手層に厚みが増した。ドラフト2位の
津田啓史、ドラフト3位の
辻本倫太郎の加入で二遊間のレギュラー争いも一層熾烈になる。球団史上初の2年連続最下位からチーム再建に向けての道は険しい。戦力を底上げするだけでなく、プレーの精度を高めることも求められる。悔しい経験を糧に、変革なるか。
写真=BBM