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ヒューマン・クローズアップ

終わりなき野球への情熱2012冬 あきらめない男たち

 

かつてスポットライトを一身に浴び、まばゆいカクテル光線の中で輝いていた男たち。
大歓声に包まれたあのグラウンドに、もう一度立ちたい――。
ここでは今オフに無情の戦力外通告を受けるも、いまなお現役にこだわり続ける男たちの戦いにスポットを当てる。

木田優夫
[元日本ハム→?]



野球へのひたむきな思いを胸に燃え尽きるまで戦い続ける

 運命の赤い糸が来シーズンも細く、長くつながっていると信じる。日本ハムを今季限りで自由契約になった木田優夫が、また不屈の精神で新天地を探している。プロ26年目の今季の一軍登板はわずか1試合。ヤクルトを退団してから3年間袖を通した日本ハムのユニフォームを脱いだ。引退という考えもよぎったが、思い直した。「体力的に“もうダメだ”というところまでは、落ちていない。チャンスがどこかにあるなら続けたい」と、現役に再挑戦することを決めた。

 自分自身と向き合ったとき、正直な気持ちに嘘はつけなかった。11月9日の12球団合同トライアウト(Kスタ宮城)に参加。まずは国内球団からのオファーを待ったが、吉報は届かなかった。「近いうちに結論を出さなければいけない」と、そのときは話していたが、いまだ身の振り方への答えを出せずにいる。尊敬する栗山監督からは現役続行への道を勧められるなど周囲の期待の声にも耳を貸した。現在は韓国、台湾球界のほか、独立リーグも視野に入れ、進路を熟考している。

 引き際の美学を考えたときもあった。阪神・金本、ソフトバンク・小久保ら同年代が区切りをつけていった。「僕は彼らのような偉大な選手とは違う」とは思っても、チャンスが激減して若手が台頭する中で心が揺れたこともあった。それでも1人静かに奥底にある本能と向き合ってみた。「僕の人生は野球があったから楽しかった。辞めるのはもったいない」。来年9月で45歳。日米述べ8球団のマウンドに立ち続けてきた右腕の挑戦の日々は、まだ終わらない。

PROFILE
きだ・まさお
1968年9月12日=44歳 188cm95kg 右投右打
プロ経歴/巨人87(1)-オリックス98-タイガース99-オリックス00途〜01-ドジャース03-マリナーズ04途-ヤクルト06-日本ハム10〜12
NPB通算成績/516試合73勝82敗50S(50H) 防御率3.91
MLB通算成績/65試合1勝1敗1S(4H) 防御率5.83

▲オファーこそなかったが、12球団合同トライアウトでも熱投。夢はまだ続く




下柳剛
[元楽天→?]



反骨心と燃え盛る闘志で新天地での復活に懸ける

 11年限りで阪神を戦力外。今季は楽天に活躍の場を求めたが、復活叶わず2年連続で戦力外の苦渋を味わった。阪神時代に“同級生トリオ”として黄金期を支えた矢野、金本はともに引退。時代の流れに足もとを洗われながらも、左腕は今も現役続行を熱望する。国内球団に主眼を置きつつも、海外でのプレーにも視野に入れながらトレーニングを続行。「このままでは死んでも死にきれない」。まだ燃え尽きていない。

 通算129勝の道のりを支えた反骨心。45歳を迎える来シーズンを見据え、左腕の闘志はさらに燃え盛る。

PROFILE
しもやなぎ・つよし
1968年5月16日=44歳 184cm91kg 左投左打
プロ経歴/ダイエー91(4)-日本ハム96-阪神03-楽天12
通算成績/627試合129勝106敗22S(0H) 防御率3.92


清水直行
[元DeNA→?]



韓国・台湾でのプレーも視野に入れて再起を目指す

 来季開幕にはユニフォームを着ている構想を練っている。DeNAを戦力外となった清水直行は、1月からキャッチボールを始めるための準備を進めている。痛めている左ヒザの状態が上がってきており、本格的に自主トレを行う。2月のプロ野球キャンプでのテスト生として呼ばれればいつでも投げられるようにするためだ。肩の方は健康な状態を保っており、ヒザが完治すれば十分に戦力になれる自信はある。

 日本でのプレーが基本線だが、韓国・台湾も視野に入れる。とにかく開幕までにマウンドに上がることを目指していく。

PROFILE
しみず・なおゆき
1975年11月24日=37歳 180cm85kg 右投右打
プロ経歴/ロッテ00(2)-横浜・DeNA10〜12
通算成績/294試合105勝100敗0S(0H) 防御率4.16


はみだしTOPICS I
育成選手初のメジャー・リーガーを目指して
小林公太[元DeNA→インディアンス(マイナー)]

 DeNA戦力外の小林公太が、11月30日に米インディアンスとマイナー契約を結んだ。10年に育成ドラフト2位で入団。同期で育成1位の国吉が先発ローテの一角となるかたわら、二軍戦登板が3年間で13イニングとくすぶっていた。しかし、10月のトライアウトで変則サイドスローのフォームを評価され、夢だったメジャーへの挑戦権を手に入れた。今後は日本球界を見返すためにも、厳しい戦いへ挑んで行く。



はみだしTOPICS II
あの男たちも現役続行を表明!

 ほかにビッグネームでは元阪神の小林宏も古巣ロッテの入団テストに不合格も現役続行を表明。また、トライアウトにも参加していた元ヤクルトの一場靖弘、元巨人の朝井秀樹、元楽天の有銘兼久らもオファーを待ち、来るべき時に向けて精力的にトレーニングを励んでいる。まだまだ終わらない男たちの戦い。果たして彼らに吉報は届くのか。その動向から今後も目が離せない。
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