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イラストで解説!

フロントドア・バックドアとは?

 

ヤンキースの黒田はメジャーで生き残るため、ツーシームやスライダーでのフロントドア、バックドアを体得していった


広島に復帰した黒田博樹投手の活躍で耳にする機会が増えた「フロントドア」。新聞報道上でヤンキースの田中将大投手が、日本球界でフロントドアが流行する可能性を示唆しており、注目を集めている。では、この「フロントドア」とは何なのか? イラストで解説しながら詳しく説明していく。
イラストレーター・横山英史

日本でも球数制限が浸透すればフロントドアブームも…


 スライダーの配球パターンでインスラ(右打者の内角ボールからストライクゾーンに曲がっていくスライダーのこと)などと言っていた言葉が変化していったと思ってもらってもいい。この流れで現在、カットボール、ツーシームなどのムービングファストボール(真っすぐと同じくらいの速さながら急に変化する球種)の配球としてメジャー・リーグで使用される用語が、フロントドア、バックドアという言葉だ。

 メジャーでは投手分業制により、先発投手たちは中4日で100球前後を投げる。この中でいかに長いイニングを投げられるかと考えると、1球で打ってグラウンド内に飛ばしてほしいし、簡単に見逃しのストライクがほしい。ムービングファストボールはボール1個分、もしくは半個分、小さく動かしてバットに当てさせたり、見逃しストライクを取りに行くうってつけの球種なのだ。この考えが基となり、さらに効果的にバットを振らせたり、見逃しストライクが取れるには? と、考え出された使い方がフロントドアとバックドアなのだ。

 さて、ではこのフロントドアとバックドアとは何か? 右投手の場合、右打者なら、体に当たりそうなコースからストライクゾーンにスライダー(カットボールなど)を投げストライクを取る。また、左打者ならツーシーム(シンカー)を体に当たるようなコースに投げ、そこからストライクゾーンに曲げる。この使い方が、フロントドア(図参照)だ。



 一方、右打者の外角ボールゾーンにツーシームを投げ、内側に曲げてストライクを取る。左打者の場合にはスライダー(カットボール)を外角ボールゾーンに投げ、そこからストライクゾーンに曲げる。これがバックドアだ。つまり、これは打者の意表を突く配球であるということになる。打者はフロントドアなら一瞬「死球」を覚悟させられ、バックドアなら、「ボール」だと認識させられることになる。

 この使い方ができるとさまざまなパターンで打者を幻惑することができる。昨年の変化球特集(6月25日号)でヤンキースの黒田博樹投手は、インタビューで「フロントドアでの見逃し三振が、僕のような投手は一番気持ちいいです。同様にバックドアも意表を突くボールで、しっかり沈んでくれれば内野ゴロになる」と語っている。今やドア系を自由自在に操る投手となった黒田。調子の良いときには、野球ゲームのような鋭い動きでフロントドア、バックドアを使い分け打者を翻ろうしていく。海を渡った幾多の日本人投手の中で、ここまでこの“ドア系”を操れる投手はいない。

日本の打者はドア系にどう対応していくか


 もし、今後プロ野球でもこのドア系の配球を自在に操ることができる投手が出てきたら、野球界に新しい流れが起こるはず。

 第3回WBCの東京ラウンドでの台湾戦を思い出してほしい。日本は台湾先発の元ア・リーグ最多勝投手の王建民のツーシームとドア系の配球に苦しめられた。四番の阿部慎之助は、王との対戦で2ストライクからフロントドアのツーシームシンカーを投げられ、体をのけぞらせながら三振を喫した。

WBC東京ラウンドでの台湾戦で、日本の四番・阿部慎之助が王のツーシームシンカーのフロントドアで見逃し三振を喫した。まだ日本ではメジャーな配球ではなく、見極めることさえ困難だった


 このように、まだ日本の打者はドア系の配球には対応できない。メジャー公認球と統一球では変化の幅に違いはあるが、投打に器用な選手が多い日本において、これが主流になれば、プロ野球の技術はさらなる進化を見せる可能性がある。その意味でも、今後このドア系の配球をどの日本人投手が使い始めるかを見ながらプロ野球を楽しんでみてはいかがだろうか。
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