今回の統一球問題は単にコミッショナー事務局の不用意と、とらえるのは非常に危うい。そこには重大な欠陥が潜んでいる。果たして、本当の問題とは何なのか。かつて西武球団代表などを務め、プロ野球界に精通している坂井保之氏に解説してもらった。 個人の倫理上の問題か?
今回の統一球問題は、どこから見ても事務局の手落ち、あるいは管理者である加藤良三コミッショナーの自覚のない無責任さから端を発していることは言うまでもない。何とか追及を免れようと言い逃れを試みる氏の態度は見苦しいことこの上ない。事の真偽は新たに発足する第三者委員会の手で明らかにされるようだから、まずはその審理を見届けたい。
それはさておき今回のケースは単に事務レベルの手続き上の手違い、もしくはコミッショナー個人の倫理上の問題としてのみとらえる見方には首を傾げる。
選手ならびに観客は今回の不祥事で現実的に金銭上の損害を被った。あるいは被りつつあるという側面を無視するわけにはいかないからだ。実際にプレーしてその対価を得ている選手にはボールの飛ぶ、飛ばないは選手生命の死活に直結する。また、野球の公正さを信じて観戦した今季の有料入場者は“公正でないショー”を見せられた、いわば詐欺的商法の被害者とも言えるのではないかと考える。これに対する謝罪、もしくは(ケースによって)損害補てんは早晩、何らかの形で講じられねばならないのではなかろうか。
そもそも、これほど大規模かつ不用意な失態がなぜ起きたのか。コミッショナーの無責任を問うと同時に、現在のプロ野球界の仕組みそのものにも、重大な欠陥があったからだというのが私の主張だ。
以下、その論点を検証してみよう。
閉鎖的な体質
野球界の憲法とされる「野球協約」を読むと分かるが球界の仕組みは複雑に分化されている・・・
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