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チームを勝利に導く名将の言葉力

名参謀・森繁和が語る落合監督の“オレ流”言葉術

 

2004〜11年に中日で指揮を執り、その間すべてAクラスというとてつもない実績を残した落合博満氏。指揮官の言葉はチームに多大な影響を与えるものだが、チームを統率した“オレ流”言葉術はどのようなものだったのだろうか。コーチの要職で落合政権を支えた名参謀・森繁和氏が語った。



「いろいろな考えがある。その中から選択してみろ」


 人の言葉には、何かを動かす大きな力がある。それは間違いない。落合博満監督の下でヘッドコーチなどを務めた、2004年からの8年間、私は言葉そのものに負けず劣らず、「見る」ということにも同様に大きな力が秘められていることを学んだ。口から直接、出されるものが言葉。「目は口ほどに物を言う」というが、その目から発せられるものがもう一つの「落合流の言葉」ではないだろうか。

 03年オフ。新たに就任した落合監督にコーチとして声を掛けていただき、中日に入団した。その際に言われた言葉は今もしっかりと覚えている。「まずは見て、それから言葉を選べ。そうしてから指導するんだ」と。見て、育てる。これは、私にとっての「球界のオヤジ」である根本陸夫さん(99年没。西武監督、球団管理部長、ダイエー球団社長などを歴任)の教えと同じだった。まず、選手を見ることからスタートする。しっかり観察をする。「言葉よりもまず、見ることから始めないとダメだ」。落合監督の下での8年間。選手によっては1カ月見ていて何か気付くこともあるし、それが1年のときもあるだろう。ただ闇雲に言葉を掛けて、空回りしてしまっては意味がない。辛抱強く、見る。ここから落合監督の指導は始まると言っていい。

 とにかく、よく観察をしている人だ、と思った。例えば私が、ある投手と話をしているとしよう。落合監督はその姿を、どこかでしっかりと見ている。さらに、その話をそばで聞いていたとしても、その場で否定するようなことは絶対にしない。見て、話を聞いた上で、自分の思いをポンと口にする。これは選手に対してだけでなく、われわれコーチ陣にも同じ。落合監督は選手と同様に、コーチの言動もしっかりと見ている。見られている私自身も「そこまで見ていてくれているのか」と感嘆したことが何度もあるが、一方でそこには大きな責任も伴う。任されている、という強い思いが芽生える。

 見ることから生まれる言葉。落合監督の話を聞いていると、「打者」と「投手」の目線がいかに違うのかということに驚かされる。私は投手出身。一方、落合監督は三冠王を3度も獲得した大打者だ。そんな指揮官が投手陣に声を掛けるときは・・・

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