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V戦士インタビュー 村田修一[読売ジャイアンツ/三塁手]

1つのカベを乗り越えたフォーム改造

 


テッド・ウィリアムズを超えた――。8月に月間46安打を放ち、セ・リーグ記録を塗り替えるなど、巨人移籍2年目で真の力を発揮。リーグ連覇にその打棒で貢献した村田修一を、原辰徳監督は“打撃の神様”と比較し称賛する。「自分の打撃を取り戻す」と臨んだ13年、5年ぶりと認める打撃面での充実は、覚悟を固めて断行したリセットにあるという。

取材・構成=坂本匠 写真=高塩隆、BBM

1つカベを乗り越えた

――巨人移籍後、2年連続のリーグ制覇となりました。初めての優勝だった12年とは、また一味違った感慨があるのではないですか。

村田 横浜(現DeNA)から移籍を決断したそもそもの理由が“優勝”でしたから、昨年は自分自身のことは押し殺してでも、そのことを第一にと考えていました。結果的にチームは5つのタイトルを獲得しましたし、それはそれで良かったと思っています。

ただ、やっぱり、もっと打ちたかったという思いも強くて(※12年の成績=144試合、打率.252、12本塁打、58打点)。日本一も初めて経験させてもらいましたが、どこかに引っ掛かる部分もあったのが正直な気持ちです。ですから今年は、まずは自分の打撃を取り戻そうと。そういう意味でも、打てて良かったとホッとしていますし、胸を張って『優勝に貢献できた』と言えますね。

――これからポストシーズンに突入しますが、そんなここまでのレギュラーシーズンを、村田選手は“進化”と表現しています。

村田 大きく一歩、前進できましたからね。今までの打ち方、考え方を一掃してすべてを変え、新しい自分を見つけられたのかなと。

――昨年オフから大きく分けると2度のフォーム改造がありますよね?そしてこのチャレンジの結果、打撃主要3部門すべてにおいての好成績につながっています。

村田 そうですね。まずはホームランをもっと打ちたいと考えて、いっぱい打っていた横浜時代のフォームに戻しました。オフ、春のキャンプと取り組んだ、シーズン序盤に打っていたグリップの位置を耳の位置まで上げたフォームです。ただ、3、4月は良いスタートを切りましたが、5月、6月とまた打てなくて。原因はこのフォームだと、インサイドの厳しいボールに詰まってしまう。思ったようにバットも出てこないので、研究を重ねた結果、今度は懐を広くして、グリップの位置を肩まで下げる現在のフォームへの変更を決断しました。これがハマリましたね。

――シーズン中での大きな変化は、賭けだったのではないですか。

村田 普通に考えれば、勇気が必要だと思います。でも、5月、6月の成績を見れば、シーズンが終わってまた2割5分、ホームランも20本に届かないことが目に見えていましたから。

09年にケガをしてから、打撃的にはほとんど良いところがないという感じで、ここ数年はずっと2割5分くらい。守備はみんな褒めてくれますけど、守備でこの世界を生きてきたわけではない。ホームランを打ったり、打点を稼いだり、そういう部分でここまで来ているので、打撃面で『もう終わりだな』と言われるのが嫌でしたし、村田はまだできる、そういう部分を見せたかったので、すべてを変えようと。

――決断を下したのはいつですか。

村田 6月25日の広島戦(マツダ広島)です。同点に追いついた8回に、ミコライオから勝ち越し右翼線二塁打を打ったのですが、その時、真っすぐに差し込まれないように、バットを短く持って、極端に言えば、ミートしただけなのですが、その感触が良かったんです。研究はずっとしていたんですよ。打順も初めは中軸を打っていたのに、徐々に下がってきていましたからね。

――確かに、6月12日のオリックス戦(京セラドーム)では、打順を九番に下げていました。

村田 次に控えるメンバーも良い選手がいっぱいいますし、九番に下がった日には、さすがにここで打てなかったら明日はないなと(苦笑)。原辰徳監督も現役時代はサードでしたし、ジャイアンツ伝統のポジションですから。そこを守っている選手が打たないのは何事だとなるじゃないですか。

――現在のフォームはソフトバンク内川聖一選手に似ていると言われていますが、『研究していた』のは、特定の選手ですか。

村田 内川もそうですが、ラミちゃん(ラミレス、DeNA)をはじめ、インサイドをうまくさばくタイプの選手です。そういう選手を映像で見て、参考にしました。グリップの位置を下げて、懐を広くするのも彼らを見てです。バットを下ろしてくる間のムダも省けて、インサイドの厳しいボールに対してもスムーズにバットが出るようになりました。

▲7月以降の3カ月強で17本塁打と量産。弱点克服を求めた新フォームは、結果的に村田の長打力を再確認させる結果となった。なお、主要打撃3部門すべてリーグ5位以内にランクしている



――狙いどおり弱点を克服できたと。

村田 もともと、打てないコースは手を出さない、という考えだったんです。打てるコースをジッと待つ。でも、それには限度があります。弱点を攻められていることも分かっていましたし、であればそこを狙わない手はないという考えに変わりました。それがあってのフォーム改造でもあります。インコースを意識していても、アウトコースって打てるんですよね。得意なコースなので、体が勝手に反応してくれる。でも逆に、苦手なコースは、狙っていないと反応しない。このことに気付いて、シーズン中にリセットできたというのは、大きかったです。1つカベを乗り越えたような気がします。

1つ勝つことの難しさ

――7月は月間打率.406、8月は同.422、10本塁打でリーグの月間記録である46安打を放ちました。フォーム改造に乗り出してから、わずかな期間でモノにできた感覚がありましたか。

村田 どちらかというと、7月はハマっていたけど、長打が出ないなという物足らない感覚。8月はその流れのまま打っていたら、長打も出始めた。確率良くバットに当たるようになってきて、とらえさえすればホームランも出るんだなと、再確認できた1カ月でした。

――原監督からはテッド・ウィリアムズ(元レッドソックス。首位打者6度、本塁打王4度で“打撃の神様”と呼ばれる)を超えたと。

村田 うれしいですね。ジャイアンツのクリンーアップを打つからには、確実性と長打を両立しないといけないと思っています。打点を稼ぐのか、つなぐのか、大きいのを狙うのか、その辺はケースによって、意識を変えていければいい。

――それが可能な打撃フォームになったということですね。

村田 そう思います。弱点が少なくなったフォームですね。

――8月24日からは阿部慎之助選手に代わり、四番を任されていますが、「四番の重圧はない」と。

▲9月22日にリーグ連覇を達成。セレモニー終了後、55年会(いわゆる松坂世代)のチームメートと喜びを分かち合う。前列右から實松、杉内、後列右から加藤、村田、矢野。手術からの復帰を目指す久保がいないのが残念



村田 昨年は意識しました。でも、今年は僕が四番に座ったときも、阿部さんが三番にいましたし、それまでの四番・阿部さん、五番・僕という感覚で打席に入れていますから、気負うこともないんです。

――打撃面の充実ももちろんだと思いますが、昨年を経験したゆえの、良い意味での余裕が感じられます。

村田 役割がはっきりしているからだと思います。チームが開幕から好スタートを切って、連覇を達成できたのも、そう。昨年は僕も来てすぐでしたし、ボウカーも杉内(俊哉)やマシソン、ホールトンなどもそうで、新しい選手がいっぱい入ってきた中でスタートしたので、多少の混乱があって序盤に苦しんだと思うんです。でも、今年はホセ(ロペス)と菅野(智之)くらい。役割分担ができた中でのシーズンなので、それぞれが仕事を全うすれば、自ずとリーグ優勝が見えてくるという、理想的な形が出来上がっていました。

――役割分担が今年のジャイアンツの強さということですね。

村田 あとはカバーリングですね。野球はミスのあるスポーツです。特に今年のチームは、先発投手が崩れそうになったところを中継ぎが抑えて勝ちをつけてあげる。打線も同じで、ここで1点取りたいとき、ここで1点取られたくないとき、チームとして思うように試合を運べた。こういうつながりができているチームが勝てるんだと、あらためて感じました。

――原監督はキャンプインの際、選手たち全員に“連覇”を強く意識させたと話しています。CSファイナルステージが間もなく始まりますが、その先にある日本一連覇は、V9以来、40年遠ざかった悲願です。

村田 そのためにも、まずはCS。阪神と広島とどちらが相手となるか分かりませんが、昨年は、僕自身、初めてのCSで中日相手に3連敗から始まり、1つ勝つことの難しさ、つらさを知りました。1勝のアドバンテージがあるからといって、受けて立つような戦い方をするつもりはありません。初戦から鼻息荒く、興奮した状態で行かないといけない。今年のジャイアンツの良さ、強さを発揮して、CSを突破し、日本一連覇を目指したいと思います。

PROFILE
むらた・しゅういち●1980年12月28日生まれ。福岡県出身。177cm92kg。右投右打。東福岡高から日大を経て、03年自由枠で横浜(現DeNA)に入団。07年、08年に2年連続で本塁打王に輝くなど、日本球界を代表する長距離砲である。11年オフに巨人へFA移籍し、12年はチーム5冠の功労者に。今季は7月に打率.406、8月に同.422、また同じく8月にはリーグ新記録の月間46安打32得点などの活躍でセ連覇に貢献した。今季成績は144試合519打数164安打25本塁打87打点、打率.316(2013年シーズン終了時)。



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