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2014ドラフト特集第3弾

元プロからアマチュア指導者へ・金森栄治[元西武ほか]

 

プロ野球経験者は新設された研修制度を受ければ高校、大学での指導資格を短期間で取得できるようになった。この制度により、野球界に新しい風が吹き始めた。
そこでここからはアマチュアの指導者となった元プロ選手を紹介する。
4月から金沢学院大東高の野球部監督に就任した金森栄治は、昨年7月の研修を受け、1月20日に資格を認定された。そして新制度を使った初の高校野球部監督となった。
プロで選手として、指導者として実績を残した金森監督は今、何を考え高校生を指導しようとしているのだろうか。

取材・文=椎屋博幸 写真=BBM



若いときの苦い経験を味わってほしくない

 170センチの小さな体が、選手たちの中に入るとどこにいるか分からなくなる。というのも一カ所にとどまることなく動き選手に積極的に話しかけるからだ。だが、すぐに見つけられる。4月に就任いたばかりで、白い帽子、白いユニフォームがどの選手よりも真新し良いからだ。

 現役時代は西武ヤクルトで日本一を経験。打撃コーチとしてもロッテソフトバンクなどで指導し日本一に貢献。その築き上げた打撃理論は多くのプロ野球選手が信望する。まさしく理論派の指導者だ。

▲現役時代は西武、ヤクルトで日本一を経験。小さな体で気迫を前面に出し、勝負強い打撃で人気を集めた



 その金森監督は4月2日に金沢学院東高の監督に就任した。今回新設された制度を取得し、中学生まで過ごした金沢で高校野球の監督として新しい人生のスタートを切った。

「地元に恩返しをしたいという気持ちは強いですね。ただ、僕は中学生までしかいませんでしたから、ほかの方よりも石川愛は小さいかもしれない。でもそれに負けない気持ちはあります。ただ、石川の高校に進んでいたら今の僕はなかったし、プロ野球選手にもなれなかった。だから故郷を出たことを悔やんだことはない。だからこそ、プロで学んだことを選手たちに伝えたいんです」

 金森監督自身、多くのプロ野球選手に支持される打撃理論をつかんだのは現役晩年のこと。ヤクルト時代、野村監督に「練習するなら速い球を打て」と言われた。その速い球を打つ中で、どうしたら強い打球が打てるのか掴んだ。その打撃理論から導き出した体の使い方……「なぜもっと若いときに理解できなかったのだろう」という後悔の念に駆られるという。その「もっと若いうちに」という悔しさがコーチ時代の指導に生かされていった。

「若いころコーチに教わっても頭で理解できなかったんです。感覚的な指導も多かったので。それを僕は一つひとつ言葉にして伝えようと思います、コーチ時代もそうだったように。高校生の選手たちは、今は分からないかもしれないですが、体の使い方の基本、打撃の使い方の基本が体に染みつけば、自然と体が強くなり、ケガも減り、野球がもっとうまくなります。野球は高校で終わりでない。大学、社会人、プロを目指すときに高校で土台ができていれば、どんな練習に耐えられるし、どんどんうまくなる」

▲「生徒たちの純粋な目を見ると昔を思い出します」と生き生きとした表情で語る金森新監督。こういう機会をもらい感謝しながらの指導をしている



人としてあるべき姿
気の持ち方を示す


 赴任後のある朝、練習場近くの道を歩いていると母親と小さな娘が散歩していた。「おはようございます」と2人から言われた。このとき、挨拶をする、そして挨拶をすることで、人の気持ちは温かくなることを改めて知った・・・

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