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前半戦のカープ躍進を語る上で、この男の存在は欠かせない。一岡竜司、23歳。巨人へ移籍した大竹寛の人的補償で今シーズンからチームに加わり、その才能が一気に開花。150キロを超えるストレートと落差の大きいフォークを武器に「勝利の方程式」の一角としてチームの快進撃に貢献してきた。右肩関節炎からの復帰も間近。若き右腕のシンデレラストーリーはまだ始まったばかりだ。
取材・構成=菊池仁志 写真=前島 進(インタビュー)、BBM

登板のたびに緊張でガチガチ!

──5月25日の西武戦(マツダ広島)でプロ初セーブ。4月27日の巨人戦(同)で挙げた「初勝利よりうれしい」、というコメントの真意を教えてください。

一岡 2012年に巨人に入団したときに、どこをやりたいか聞かれたのですが、そのときに「将来的には一番後ろをやりたい」と答えました。巨人では二軍ですが、2年間クローザーという形でやらせてもらいました。二軍であっても重要なポジションであることには変わりなく、その中で得た経験を一軍で生かすことができたうれしさが大きかったんです。もともと先発志望はないですし、先発がやりたいと思っていれば、勝利の方がうれしいはずですけど、僕は違うので。

▲5月25日の西武戦(マツダ広島)でプロ初セーブをマーク。若き右腕の笑顔がはじけた瞬間だった



──ミコライオが不在の約20日間で2セーブを挙げました。

一岡 お試し期間でセーブを挙げられたんで(笑)、良い経験をさせてもらったと思っています。

──抑えを自分のポジションにしたいという思いは強まりましたか。

一岡 セットアッパー、クローザーとして何年も通して活躍できたらいいと思っていますが、今の自分の力では大きなことは言えないです。精神的な強さが必要だし、真っすぐ、フォークに磨きをかけないと通用しません。それにしても最後に投げるプレッシャーってすごいですね。そこに自分の力不足を痛感しました。

──セットアップとクローザーで、心理的な負担は異なるものですか。

一岡 どこで投げようと、毎回、カチカチに緊張するんですけど(笑)、抑えは後がない立場でそれだけ重要なポジションです。お試しとはいえ、そこで出してもらえることは信頼や期待を受けている証拠だと思ったんでうれしくはあったんですけど、やはり少し違いますね。初セーブは喜びもありましたが、こんなにもプレッシャーがかかる場面でミコ(ミコライオ)は投げているんだと分かって、ミコのすごさを思い知りました。

──「緊張した」という初めてのセーブ機会の登板も、1安打は打たれましたが、2三振を奪うなど、力は出し切れたのではないですか。

一岡 パフォーマンスとしては出し切れたと思いますけど、真っすぐのキレやフォークの精度が上がれば、ミコがマウンドに上がったときのような安心感が与えられるのかなと思ったんです。

──緊張する場面で力を出し切れる点、カウントが悪くなっても大きく崩れない点に、気持ちの強さを感じます。

一岡 真っすぐとフォークがメーンなんで、思い切り投げるしかないですからね。カウントが不利になったときも場面を見てですが、打たせればどうにかなると思えます。そのときはバッティングピッチャーの感覚のような。もともとコースを狙えるピッチャーじゃないんで、真ん中に投げたら散らばるんじゃないかと思って投げています。

──開き直りでしょうか。

一岡 それより、僕にとっては「初心に戻る」ですね。思い切ってまずは投げ込むこと。ピッチャー不利のカウントでは対自分になりがちなので、バッターと勝負する初心を思い出してしっかり投げ込むことです。

──一方で5月29日のロッテ戦(マツダ広島)では今季、21試合目にして初失点しました。

一岡 5対1で勝っている場面での9回の2失点だったのですが、セーブ機会でもありませんでしたし、先発の勝ちを消したわけでもありません。唯一、(中田)廉が自分のバックアップで肩を作ってくれていたんで、廉には「ゴメン」って謝ったんですけどね。ほかの方にあまり迷惑をかけない失点でしたから落ち込むこともありませんでした。逆にそれまで頑張っていた分、防御率が跳ね上がることもなくて、すぐに「次が大事だ」と思うことができました。

──その次の登板は6月1日の楽天戦(コボスタ宮城)で3人をピシャリ。2セーブ目を挙げました。

一岡 石原(慶幸)さんがとことん、真っすぐを続けてくれて、ヒット性の当たりをエルドレッドが飛びついてアウトにしてくれました。皆さんのおかげで抑えられているってすごく思います。
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