週刊ベースボールONLINE


 



文=岡本朋祐 写真=石井愛子、太田裕史

浮足立ったチームで放った存在感


 激戦区・福岡大会でのチーム打率が.347。7試合で65得点の猛打に対して失点は7と、九州国際大付は圧倒的な戦力で3年ぶりの甲子園出場を手にした。

 東北(宮城)時代の03年夏に加え、05年8月から率いる九州国際大付でも11年春に準優勝へ導いた若生正廣監督が今夏限りで勇退。“主将・四番・捕手”でチームの看板である清水優心を筆頭に、三番・遊撃手の古澤勝吾も「日本一の監督にする」で思いは一致していた。

 優勝候補の一角に上がったが、甲子園とは入りが難しい。つまり、初戦の戦い方によっては「何もできないまま終わる」というケースもよく見られる。まさに今夏の九州国際大付はこの負のパターンにはまった。

 東海大四との1回戦。序盤の走塁ミスが響き、相手にペースを握られ、1対6とまさかの大敗を喫した。

「いつもと違う感じ。自分のプレーができているのは、数人しかいなかった。清水と古澤? 気持ちが入っているから、それなりに結果は残す」

 見せ場はあった。0対5の6回裏、古澤は右翼線へ鋭いライナー(二塁打)を運んだ。相手投手は“超スローボール”で話題となった西嶋亮太。前の打席の初球に“魔球”を投じられた後、2球の空振りは、古澤にとって野球人生初の屈辱だった。

 しかし、次の打席ではしっかり、リベンジ。続く清水は、初球をたたくと弾丸ライナーでフェンス直撃、左翼越えの二塁打。意地の1点を返した。劣勢の場面でも、冷静に自分の仕事に徹することができるのもスターの資質。

 清水はイニング間も遠投110メートルを誇る矢のような二塁送球でスタンドを沸かせ、古澤も難しいゴロを軽快にさばき、攻守の高いセンスを見せた。「甲子園で終われたことが財産。上の舞台で勝負したい」(清水)「プロ一本。野球をやっている以上は高いレベルでプレーしたい。それが若生監督への恩返しになる」(古澤)

 チームが浮足立った分、潜在能力の高さが際立った1試合だった。




PROFILE
しみず・ゆうし●1996年5月22日生まれ。山口県出身。185cm88kg。右投右打。城山小2年時から東和スポーツ少年団でソフトボールを始め捕手。東和中では岩国ボーイズに在籍した。九州国際大付では1年春からレギュラー。昨秋から主将を務める。今夏、初めて甲子園に出場したが、1回戦で敗退(対東海大四)。

■14年夏の甲子園成績
1回戦 ●0−6東海大四
打数4 安打2 二塁打1 三塁打0 本塁打0 打点1 盗塁0 四死球0 打率.500

打数4 安打2 二塁打1 三塁打0 本塁打0 打点1 盗塁0 四死球0 打率.500

PROFILE
ふるさわ・しょうご●1996年9月5日生まれ。滋賀県出身。178cm80kg。右投右打。木之本小2年時から木之本球友クラブで野球を始め、投手兼三塁手。木之本中では湖北ボーイズに在籍し、全国大会出場。ボーイズ日本代表の四番を務めた。九州国際大付では1年秋から遊撃のレギュラーとなった。

■14年夏の甲子園成績
1回戦 ●0−6東海大四
打数4 安打1 二塁打1 三塁打0 本塁打0 打点0 盗塁0 四死球0 打率.250

打数4 安打2 二塁打1 三塁打0 本塁打0 打点0 盗塁0 四死球0 打率.250
特集記事

特集記事

著名選手から知る人ぞ知る選手まで多様なラインナップでお届けするインビューや対談、掘り下げ記事。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング