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2014タイトルウォーズ

初の途中加入本塁打王へ 西武メヒアの打撃の秘密

 

外角球対策と“おとり”の内角を逃さず捉えるパワーで初の快挙へ




 日本球界初の快挙に向けて突き進んでいるのが西武エルネスト・メヒアだ。9月19日のソフトバンク戦(西武ドーム)で今季32号ソロを放ち、本塁打争いリーグ単独トップに立った。5月15日の日本ハム戦(札幌ドーム)で来日デビュー。いきなり初打席初本塁打を放ち、強烈なインパクトを残した。9月21日時点で98試合で33号にまで達し、シーズン途中加入での本塁打王となれば球界初の偉業となる。

 かつて伝説の180メートル弾を放ったアレックス・カブレラと同じベネズエラ生まれの“怪物”。身長198センチ、体重118キロの巨漢を誇るパワーのみならず、巧みな打撃にも量産態勢の裏付けがある。

 来日から間もない5、6月は8本塁打だった。当時は重心を落とし、前かがみ気味に構えていた。だが、本塁打を警戒する相手投手は外角球中心の配球が続き、空振りが増加。

「かがまずにスッと立つことで外角が遠く見える。そうすればむやみに外角に手を出さなくなる」と田辺監督代行が説明するように、外角球対策として、前かがみだった構えを棒立ちに近い形に修正。7、8月と19本塁打につなげ、量産体勢に入った。

 長距離打者が外角中心の攻めを受けるのは当然とも言える。ただ、メヒアの本塁打は内角球を逃さないのが最大の特徴だ。本塁打数31本で追う(9月25日時点)、チームメートで過去4度、本塁打キングの中村剛也はメヒアの打撃について「おとり球の内角を打っちゃうんですよね」と勝負球に多投される外角球の前段階の内角球を確実にとらえていると解説する。

 さらに「詰まっているんだけど(スタンドまで)届く。左腕を抜いていると思うんですが、普通は抜いたらパワーが落ちる。でも、メヒアは右腕にそれを補うだけのパワーがあるんだと思います」と付け加えた。

 胸元付近のボールをとらえる技術と右腕1本でもインパクトで押し込めるパワーがメヒアの打撃だ。身長からすれば短めの34インチのバットも内角球を狙っていることを証明している。遠心力で打つというよりは、強くボールをたたいているというイメージだろう。

 9月21日の時点で打率.297。本塁打争いでメヒアを追う中村、オリックスのペーニャが2割5分台ということを考えれば、安打のみならず確率の上ではメヒアが最も本塁打王に近いとも言えるはずだ。

▲内角球を左腕を抜きながら、右腕1本で押し込める。そのパワーで打球をスタンドまで運んでしまうのがメヒアのバッティングだ



パのライバルたち


 パ・リーグの本塁打王争いは、30本台に乗せた3人に絞られた。9月25日現在31本でメヒアを追うのが、チームメートの中村剛也、オリックスのペーニャだ。残り試合を考えれば25本の中田翔は圏外か。シーズン中盤まではペーニャの独走態勢だったが、後半戦に入り、獅子の四番と五番が猛烈に追い上げた。その勢いに加え、中村、メヒアと2人が続く打順は、対戦相手にとってはどちらかとは勝負をせざるを得ない。そう考えれば、チーム内での一騎打ちと言ってもいい。

セ・リーグの打点王争い


 昨年の本塁打王バレンティン(ヤクルト)がエルドレッド(広島)を追いかける形となったが、どちらも万全でなく、エルドレッドがこのままゴールというのが現実的。カープ躍進の原動力の一つとなったエルドレッドは8月以降長いスランプに陥り、7月26日に3本塁打して以降は快音がなかったが、9月19日に34号、21日に35号、23日に36号を放ち、5本差に。一方のバレンティンは左アキレス腱を痛め、帰国が決定し、9月21日の試合出場が今季最終試合となった。
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