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横浜の夜空に宙を舞った原監督。現役時代の背番号と同じく8回の胴上げとなった



 まだ広島阪神と激しく首位を争っていた8月、阿部慎之助が首をひねりながら話してくれたことを思い出す。「3割打者は誰もいない。タイトルを狙えるような選手だってほとんどいないのに、優勝争いの中にいて、首位に立っている。みんな、不思議に思いますよね?

 やっている僕らだって『何で勝てているんだろう?』って不思議に思うことがあります。それでも粘って、粘って、最後に勝つ。それが今年のジャイアンツ。耐えているうちに、いずれ抜け出せると思って信じてやっていくだけです」

球団創立80年で45回目のリーグ優勝(1リーグ時代を含む)を決めた巨人ナイン。そのチームを二人三脚で支えた原監督(右)と主将の阿部(左)ががっちりと抱き合った。



 順風満帆に辿り着いた3連覇ではない。9月26日のDeNA戦(横浜)に勝利し、137試合目での優勝を決めた時点で打率.256はリーグワースト。16勝6敗で大きく勝ち越した9月の107得点で最後は盛り返したが、8月末日時点では、460得点467失点と得点が失点を下回っていた。

 常に得点力不足がついて回る状況に、原辰徳監督も「得点力に関しては、80年の歴史の中であまりほめられたチームではありませんね」と苦笑い。「もっとできる」、「まだまだやれる」は試合後、指揮官のお決まりの文句となり、100パターンを超える先発オーダーからも、苦心の跡が見てとれる。

3連覇を達成した瞬間、ナインたちがグラウンドに飛び出し、抱き合い歓喜を味わった



リーグ3連覇を見届けに長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督も横浜スタジアムに駆けつけ、ナインに熱視線を送った



 ターニングポイントは8月も20日を過ぎたころ。打線は一向に上向かなかったが、交流戦期間中(交流戦も2年ぶりの優勝)に首位に立つと、最少で阪神に0.5ゲーム差まで詰め寄られながらも、ここぞの試合ではことごとく勝利をモノにし、その座をキープ。「このチームは接戦に強い。接戦に持ち込もう」。この路線変更が功を奏した。

 8月20日から優勝決定まで33試合で22勝と他を圧倒。「接戦というものを全員で守り、そして相手より1点を上回って勝つ。そこに関しては、非常に優れたチーム」はV3決定後の指揮官の14年度版ジャイアンツ評だ。

投打とも不調が続き、ケガ人も続出した中でリーグ3連覇を成し遂げた原監督。2度目のリーグ3連覇樹立も、目指すは日本一奪回だ



 この日も先制は4回無死、四球の橋本到を三番・坂本勇人に躊躇なく送らせた好機に、亀井善行の適時打が飛び出したもの。その後は2本塁打など派手な加点を見せたが、「1点を確実に」という姿勢がなければその後の展開はあり得なかった。

 横浜の夜空に8度宙を舞った原監督は、「次はCS、そして日本シリーズ。最後の目標である日本一を勝ち取りたいと思います」。内海哲也菅野智之ら投手陣のケガ人も戦列に戻り、スタイルも確立した。日本一奪回へ。遮るものは何もない。

幾度の救援失敗をするなど、苦しいシーズンを送ったマシソン。しかし原監督はストッパーとして起用し続け、優勝を決めた試合でも9回二死から胴上げ投手としてマウンドに送った



敵地ながらオレンジ一色となったファンの待つスタンドへあいさつをする巨人ナイン。苦しい中でもファンの応援が彼らの背中を押したのは間違いない

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