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今シーズンも四番として楽天打線の中核を担ったアンドリュー・ジョーンズ。そんな男が2014年シーズン、プロ野球史上初の珍記録を打ち立てた。パ・リーグ新の118四球に加え、三振数も140で3ケタ。規定打席に到達しながら安打数(99)より四球が多いバッターは史上3人目のことだった。打率は2割台前半、併殺打もリーグワースト3位の16。それでもこの男はなぜ四番として存在感を発揮できたのか。その理由を究明する。



プロ野球界初の珍記録の裏側にある強烈な自負


 徹底マークの中でボール球を振らず、出塁することもチームの勝利には欠かせない結果だ。ジョーンズは今季118四球を選んだ。98年の片岡篤史(日本ハム)の113四球を上回るパ・リーグ記録。昨季は105四球。2年連続100四球以上は王貞治松井秀喜落合博満に続く4人目(5度目)。助っ人としては史上初。過去を見ても、圧倒的な強打者でしか成し得ない記録を生み出した。

 9月27日の西武戦(コボスタ宮城)で4四球を選び、記録を更新すると「選球眼を保てたことの証明になった」と胸を張った。初球から手を出すことは珍しい。ボール先行の状況でも同じ。「調子がいいときは『打ちたい、打ちたい』となるけど、自分1人でチームを勝たせることはできない。我慢強く打席に立ち続けた結果」。一見すると消極的に見える打撃スタイルに批判もある一方、自分を貫いて大記録につなげた。

 来日2年間で日本一と最下位を経験した。そんなチームと同様に、打撃に二面性を併せ持った。今季140三振はリーグワースト2位。2年連続で100四球&100三振を記録したのは、プロ野球界初の珍しい記録となった。

『マネー・ボール』の題材となったアスレチックスのビリー・ビーンGMが、かつて四球などによる出塁率を重視するチーム作りで成功を収めた。日本でも出塁率への考え方が変わってきてはいる。

 四球数よりも少ない99安打で打率.221は規定打席到達31人で最下位。それでもリーグ3位の出塁率.394という成績があったからこそ、不動の四番として君臨し続けることができた。得点圏打率は昨季より2厘低い.242。24本塁打も昨季からマイナス2本。打点は94打点から71打点へと落ち込んだが、これは打線がつながりを欠いた影響が大きかった。

 中核を担いながら併殺打16はリーグワースト3位と四番で攻撃の流れを止めた機会も多かった。それでも先制打、勝ち越し打などの殊勲打24本はリーグ6位。日本ハム・中田の30本を筆頭に上位5人はCS進出の上位チーム。下位3チームの中ではジョーンズがトップの数字をたたき出した。「自分には勝者のメンタルがある」と強烈な自負を持つジョーンズ。07年まで在籍したブレーブス時代、14季連続地区優勝を第一線で支えてきた。体に染みついた勝負強さは、年齢を重ねても変わらなかった。



【はみ出し捜査メモ】記録で重なった“2人のジョーンズ”


「四球V安打」を記録した過去2人の選手は、王貞治(巨人)と1970年代に近鉄などで活躍したクラレンス・ジョーンズ。1974年に達成したが、今回の楽天・ジョーンズと同様に本塁打と長打率は高いが、打率は低く三振が多い。だが、その一方で選球眼の良さで多くの96四球(安打数は93)を選んだバッターだった。40年の月日を経て“2人のジョーンズ”が数字の側面で不思議に重なった珍記録でもあった。
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