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DeNA 東野峻「ドキドキだったトライアウトまでの10日間」

 

かつては盟主・巨人で開幕投手を務めた東野峻。10年にチームトップの13勝を挙げ、ジャイアンツを背負う投手として一躍注目を浴びる。しかし、その輝きは一瞬。翌年から成績は下降線を辿り、12年オフにトレードでオリックスへ。13年は1勝、14年は一軍での登板はなく、非情の戦力外通告。トライアウトを経て、DeNA入りが決定。最後のチャンス――。もう打者から逃げない。真っ向勝負を挑む。
取材・構成=高橋透 写真=内田孝治、BBM 取材協力=東京ドームホテルドゥミル

元チームメイト内海哲也の後押し


 来年もユニフォームがまた着れる。感謝の気持ちでいっぱいです。

 10月28日に戦力外通告を受け、正直、引退しようと思いました。プロの世界で10年間やれたと思う一方で、まだまだやっていきたいという気持ちもありました。ただ、結果がすべての世界。この3年でわずか1勝しかできなかった。もう限界かもしれない。やっていく自信はありませんでした。

 実は戦力外を受ける前日、巨人の内海(哲也)さんに電話をしています。球団の方から「明日、スーツで来てほしい」と連絡を受けたので、これはクビだと思いました。巨人時代に一緒に自主トレを行い、現在も頻繁に食事に行く先輩に電話をしたんです。

 ただ、内海さんは家で携帯電話を触わらないし、全然見ない人なので、電話には出ませんでした。折り返しの電話があったのは翌日の戦力外通告を受けた後でした。

「どうするの?」(内海)

「辞めようと思っています」

「お前トライアウトも受けてないのに、逃げるなよ」(内海)

 先輩の後押しを受け、トライアウトに挑戦する決意を固めます。11月9日のトライアウトまであと10日ほど。やるからにはしっかりやろうと、全力で練習に取り組みました。

巨人時代から親交が深い内海哲也(左)は、東野にとって絶大な存在。トライアウトを受ける決断も内海によるひと言だった(写真は11年2月21日、週刊ベースボールでの対談企画にて)



 ここからの10日間はドキドキの連続でした。トライアウトを受けて結果を出さないと声を掛けてくれる球団はないということは頭で分かってはいたものの、心のどこかにオファーの連絡をしてくれる球団があるんじゃないか、と期待をしている自分もいました。

 普段、携帯はマナーモードですが解除し、着信音が鳴る状態にしました。人生で初めて携帯にシビアになりましたね。こういうときに限って、多くの電話があるものです。高校(鉾田一高)時代の後輩からも連絡が入っていて、「先輩、大丈夫っすか?」と励ましの電話でした(笑)。結局オファーはありませんでしたが、やっぱりプロは甘くない世界だと再認識したことでもありました。

 練習も苦労しました。オリックスのファームのグラウンドでトレーニングをしましたが、グラウンドは本隊の選手たちが来る前までしか使用できません。朝4時50分に起きて、6時から練習開始。約3時間ほどでしょうか、寒かったですね。チームで戦力外通告を受け、トライアウトに挑戦する4人でほぼ毎日練習をしました。一人でやると寂しいですし、一人の時間が長いと、すごく考え込んでしまいます。だから同じ境遇の4人で練習できたことによって気持ちもラクになり、明るくなれた部分もありました。

12年オフにトレードで移籍したオリックスでは2年間でわずか1勝。今季は一軍登板すらなく、10月28日に戦力外通告を受けた



トライアウト中にまさかのオファー


 11月9日、トライアウトのマウンドは今まで味わったことがない不思議な感じでした。言葉ではうまく表現できません。緊張したわけではないんです。もしかしたら最後のユニフォーム姿になるかもしれない、と考えたらプロ生活10年間の出来事が次々と頭をよぎっていくんです・・・

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