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至高の打撃バイブル

ミスタータイガース・掛布雅之が説く打撃理論

 

昨年から阪神の打撃コーディネーターとして若手指導を行っているミスタータイガース・掛布雅之DC。指導を受けた選手たちの打撃が今、日に日に向上を見せている。豊富な球種を投げてくる現代の投手たちに対応する術は何なのか?打撃において変わるモノと変わらないモノとは何なのか――。掛布流打撃理論を語ってもらった。
編集=椎屋博幸 写真=BBM、Gettly Images

踏み込む足が強いメジャーの選手たち


▲踏み込む足の右足が非常に強く、レベルスイングでフォロースルーが大きいカブレラ。速く小さい変化球、チェンジアップなどの落ちていく球に対応する現代打撃フォームの理想版だ



 私の打撃理論の骨子は「レベルスイング」です。ヒザ、腰、肩を地面に対して水平に軸回転し、バットが体に巻き付くようなスイングです。指導している阪神の若い選手にも、口酸っぱく、言い続けています。私も若いころ、中西太さんに教えられたように、キャンプの夜間練習では、体の正面にトスしたスポンジボールを左右に打ち分けさせています。身に付けるためには、反復練習を繰り返すしかありません。1988年に現役を引退してから時代は変化していますが、「レベルスイング」は不変の真理と考えています。

 例えばゴルフでも腰を水平に回してスイングしないと、ダフったり、トップにつながるように、バッティングも体の回転が傾くと、ミート率が悪くなります。バッティングも同じです。ボールに体重移動のパワーもうまく伝わらないし、前のワキがあいてしまうので力強いインパクトもできません。「レベルスイング」を身に付けないことには、プロの投手の球を押し返すことはできないのです。しかし、軸足の方に肩や腰が少し下がって回転してしまう打者が多いのも事実です。なぜレベルに振れないのか。要因のひとつは、投手側にステップする足の踏み込みが弱いからです。後方の足に体重を残したままの一軸のスイングでは、水平に体を回すことはできないのです。

 日本のトップクラスの打者も、MLBの一流打者と比べると、「踏み込み」が甘いと言わざるを得ません。昨秋に開催された日米野球でも、MLBチームの打者の方が総じて力強い踏み込みをしていました。身長167センチでア・リーグの首位打者に輝いたアストロズのホセ・アルトゥーベも強い踏み込みがあるからこそ、あの小さい体でパワーボールを打ち返せるのです。MLBで現役最強の打者と呼ばれるタイガースのミゲル・カブレラも、理想的な「レベルスイング」をしています。後ろが小さく、フォローも大きいスイングで、軽く振ったように見えても、ボールにしっかりとパワーが伝わっているから飛距離が出ます。

 少し以前に、日本で後ろ側、いわゆる軸足に体重を残したスイングがもてはやされたことがありました。2001年に73本塁打のMLBシーズン最多記録を樹立したバリー・ボンズの影響も大きいでしょう。確かにボンズのフィニッシュは軸足に体重が残っています。でも、彼のスイングはいったん強く踏み込んでから、後ろに蹴り返すことで、のけぞるような形となっているのです。松井秀喜もボンズ型のスイングと言えますが、もっと右足の踏み込みが強ければ、さらにすごい成績を残せたのではないかと思います。

▲167センチながら首位打者に輝いたホセ・アルトゥーベも強い踏み込みがあることで、小さいながらも強い打球が打てるのだ



今の変化球には軌道の長い水平ゾーンが理想


 話題をミゲル・カブレラのフォームに戻すと、踏み込んだ左ヒザの・・・

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