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13年のプロ野球人生で5度、規定打席に到達し、そのすべてで本塁打王のタイトルを手にしている中村剛也。まさに生粋のアーチストと言えよう。背番号60が考えるホームラン論とはいかなるものなのか。その言葉に耳を傾けてみよう。
取材・文=上岡真里江 写真=BBM



立ち遅れないようにタイミングを取る


 基本的には、ホームランは全打席狙っています。ホームランを打つために練習していますし、イメージもしています。もちろん、チーム事情や戦況など時と場合によって安打を狙うときもあるし、ボールが多い投手であれば四球を取りにもいきますが、やはり求めているのはホームランの本数。常に「いっぱい打ちたい」という気持ちを持っています。というのも、最近特に思うのは、「プロ野球はファンがあってのもの」ということです。どんな展開であっても、やっぱりホームランは見ていても気持ちがいいですし、楽しいと思うので、たとえ負けていようが、きれいな形ではなかろうが、「1本は1本」。どんなホームランでも、少しでも喜んでもらえたら、打つ価値はあると思っています。

昨シーズン、自身5度目の本塁打王を獲得した。日本屈指のスラッガーが、人々を魅了する“ホームラン”を打つために最も必要だと考えていることは何だろうか?「まず、バットとボールを当てることかな」と、軽口をたたいたあと口にしたのは、「タイミング」と「力を抜くこと」だった。

 もともと野球はピッチャー主導なのに、立ち遅れてしまったらもう何もできません。だから、タイミングというのは本当に大事なんです。僕は、基本的には、ピッチャーが足を上げて、腕が下がったときに、左足を上げるようにしています。でも、それが本当にほんのちょっと遅かったりしただけでも、遅れている感じがある。そうすると、全部が慌てて振ってしまって、結果、立ち遅れるということになってしまいます。それが一番良くないのですが、これが意外と難しいんです。

 なので、バッティング練習、マシンを打つときやティーバッティングのときでも、とにかく常にしっかりタイミングを取って打つようにしています。素振りをするときも、ピッチャーをちゃんとイメージして、そこで足を上げてタイミングを取ることを意識しています。バッティング練習だけではなくて、タイミングはいろいろなところで合わせようとしていますね。

 スピード表示の数字とバッターボックスで感じるスピードも、すべて一緒ではありません。特に良いピッチャーは、数字より速く感じることも少なくない。スピードガンが140キロでも、自分の体感で145キロだったら完全に差し込まれるので、それをなくすためにちょっと早く始動したり、振り出しを早くしたりの対応も必要です。バッターボックスから戻ってきた選手に「速かった?」と聞いて、「速かったです」と答えが返ってきたとしても、自分が打席に入ってボールを見たら、そんな速くもなかったと感じるときもあります。人の目や感覚とは違うので、とにかく自分の目でしっかり確認し、自分が感じた感覚を大事にし、対応するようにしています。

バットを持っているから勝手に力は入る


「タイミングが合わないと、力も抜けない」と、本人は語る。もう1つの必要要素『力を抜く』も、絶妙なタイミングがあって初めて成立するものなのである。この、中村選手の『力を抜く』能力の高さについて、宮地克彦打撃コーチは「打つ瞬間だけキュッと力が集まる。そのための『抜いて、入れて』の力加減がものすごくうまい」と絶賛する

 僕は基本、力は「入れよう」としてないです。インパクトの瞬間に力を入れようとすると、たぶんその前から力が入ってしまいますし、そんなピンポイントで、そのときだけ力を入れるというのは難しいですから。それに・・・

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