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新主将・筒香と中畑監督の絆

 

就任4年目を迎える中畑清監督が新主将に指名したのが、プロ入り6年目、23歳の若きスラッガーだった。重要なポストを与え、さらに「全試合四番」、「3割30本100打点」と大きな指令も出した。さらなる飛躍を――。指揮官が和製大砲に寄せる期待は大きい
写真=BBM

キャンプ初日の2月1日、安全を祈願して拍手を打つ中畑監督と筒香新主将



“本物”にするため
指揮官の大きな決断


 沖縄・宜野湾の空に、ワンランク上の打球を飛ばしている。「僕は口数が多いタイプじゃないので。背中で引っ張れるように頑張っていきたいです」。球団創設4年目のDeNA。新主将に選ばれた筒香嘉智は、万全の状態でキャンプに入った。

 プロ5年目の昨シーズンは、秘めていた才能を一気に開花させた。一塁、三塁から左翼にコンバートされ、主に五番打者に定着。111試合に出場し打率.300、22本塁打、77打点の好成績を残した。地元・横浜高から2009年のドラフト1位で入団し、かつて「ハマのゴジラ」と騒がれたほどの超大物。浮き沈みを知る中畑清監督が、シーズン終了後に大きな決断を下すことになった。

 11月22日、横浜スタジアムの一室。ちょうどファン感謝イベントが行われているときだった。就任から3年間、主将を任せてきた石川雄洋と2人きり。「もう一度、選手として集中してみるのはどうだ」と助言した。打率.248と苦しんだ石川にかかる重圧を解き、復活の足がかりをつくる狙い。同時に、後任として1人の名前が浮かんでいた。

「ちょっと早いかな、という考えもあったけどね……。あいつが本物になれるかどうか。大きな肩書きを背負わせてみるのも大事かなと」

 もともと「キャプテンは選手間で決めるもの」というのが持論。石川ら主力選手にも相談し「筒香でいこう」と確かに意見は一致していた。

 とはいえ、まだ23歳の若者。筒香本人は当初、やんわりと辞退していた。「僕にはできないですよ……。カジ(梶谷隆幸)さんに任せます」。オフの契約更改でも新主将の話題が出たが、結論は先送りに。「ゴウ、やってみろ」と中畑監督に促され、高校の先輩でもある石川からも「サポートするから大丈夫」と背中を押された。腹をくくったのは年明け。「新主将・筒香」は「周りの人に助けてもらいながら、自分なりに頑張ってみよう」と決意した。

1月26日に行われた「次の、横浜DeNA発表会」で、300人のファンを前に新主将・筒香を公表。大役を任された本人は「引っ張っていきたい」と意気込んだ



チームのためにすごい成績を残す


若き大砲のバッティング練習を見守る中畑監督。新主将に対し指揮官は、「自覚が出てきた。すごく存在感があった」とキャンプ初日に評している



 ルーキーイヤーから期待され、なかなか殻を破れずにいた。「直球に振り負けず、一発で仕留めろ」。口が酸っぱくなるほど、中畑監督に言われ続けた課題。一昨年の秋季キャンプではメンバーから外され「危機感がない。打率2割1分でクリーンアップみたいな顔しやがって。ふざけるな」と痛烈に批判される屈辱も味わった。「つらかったけど、吹っ切れた部分もありました」。練習では逆方向から打ち始める、丁寧かつパワフルなスイングを確立した。ファーム時代から二人三脚で取り組んできた大村巌打撃コーチも今年から一軍を担当。戦う環境は整った。

逆手で黙々と打撃練習を行う筒香。左胸にはキャプテンを差す「C」マークが光る



 宜野湾キャンプ初日には、トップバッターで声出し。「143試合に出て、チームの勝利に全試合貢献します。皆さんで優勝しましょう」と宣言した。日米通算507本塁打の松井秀喜氏も視察。「スイングが力強い。僕が同じ年齢のときを考えれば、彼の方が柔らかく逆方向にも打てる。アドバイスすることはないですよ」と褒められた。「優勝しかない。チームのために、すごい成績を残したい」。トニ・ブランコに代わる四番打者としても真価の問われる2015年。背番号25の足取りは力強さを増すばかりだ。

DeNA初代主将の石川[左]の後押しもあり、重責の担う決意をした筒香。「石川さんのようなキャプテンになれるよう頑張ります」と語っている

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