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2015 広島カープ大特集

開幕シリーズで浮き彫りになったカープの強さと課題

 



24年ぶりの優勝を目指す緒方カープのシーズンが幕を開けた。黒田博樹が8年ぶりに復帰し、否が応でも高まる機運。果たして、広島に歓喜の瞬間は訪れるのか?ここでは開幕カードとなったヤクルトとの3連戦で見えた、2015年型カープの強さと課題を浮き堀りにしてみたい。
文=大内隆雄 写真=小山真司、佐藤真一

ルーツ、ホプキンス、シェーンの「アメリカ力」が75年の初Vに貢献


 80年代半ばだったが、広島の街を歩くと「カープJ5」という垂れ幕が目についた。「J5とは何だい」と、地元の記者に聞くと「5度目の優勝を目指せ、ということなのだが、V5じゃ満足できない。必ず日本一になれ、という意味を込めてのJ5なんだよ」という答え。Jとは「JAPAN」のことだったのである。

 当時の広島は、セ・リーグ優勝争いの常連。1975、79、80、84年と4度のV。79、80年は連続日本一。84年も日本一。なるほど、「V」で満足できるハズはなく、「J」でなければならなかったのである。

 そのころから約30年。カープにも、ようやく「V」を語れるチーム力が備わってきた。と言っても、クライマックスシリーズに2年連続進出という、少々心細い実績が背景にあるだけだから、「J」を語れるレベルではない。

 しかし、その盛り上がりぶりは、当時の比ではない。今年の盛り上がりに比較できるのは、初優勝した75年の後半だろう。

 甲子園でのオールスター第1戦で山本浩二衣笠祥雄が2本ずつホームランを放って、V1ロードの景気づけを行い、後半戦は、カープ優勝はまるで時代の要請でもあるかのように(実際、そういう面もあった。戦後30年、唯一の市民球団をなんとか優勝させたいという雰囲気に日本中が包まれつつあった)、どんどん勝ち進み、ついに盟主・巨人の本拠地、後楽園球場で、巨人に勝って優勝を決めた(10月15日)。広島だけでなく、日本全体がカープの優勝を祝福する、そんな感じだった。

 今季、91年以来、24年ぶりの優勝を達成すれば、どんなことになるだろうか。筆者はそれが楽しみだ。初優勝は、球団創立が50年だから、創立25周年でのVだったが、今回の“Vブランク”は23年。カープファンは初優勝までの道のりと同じぐらいの忍耐を強いられてきたワケだ。7度目の優勝達成となったら、これは歓喜爆発、すさまじいことになりそうな予感はある。

 その歓喜爆発に果たして立ち会えるのか? 筆者は対ヤクルト開幕3連戦でそれを占ってみた。

 2戦目の今季初勝利の試合(3月28日)を見て、「これは行けそうだ」と思った。

 広島の初Vを思い出してみると、「アメリカ力」を注入して、勝っていった。2戦目の先発、今季新加入のジョンソンがアンビリーバブルなピッチングでマツダ広島の3万1043人をうならせた。1安打を許したのみの無四球、105球での完封試合(1対0)。失策での出塁もなかったから、許した走者はたった1人の、いわゆる「準完全試合」。まったくもって素晴らしい「アメリカ力」の注入だった。

新助っ人のジョンソンは第2戦で「準完全試合」となる1安打完封勝利。先発陣に頼もしい戦力が加わった



 75年は、球団史上初の外国人監督・ルーツが指揮を執った。4月27日の阪神戦での判定に怒って、退場処分。ルーツ監督は「球団のことを思って去る。私がいることで難しい面も出てきた」と辞任した。しかし、ルーツの植え付けた「冒険野球」はチームに根付き、選手は3年連続最下位の負け犬根性を一掃してVへ突き進んだ。

 ルーツは去ったが、彼は、ホプキンス、シェーンという「アメリカ力」を置き土産にした。2人はこれまでの外国人選手とは違い、「勝つこと」に徹底的にこだわった。特にホプキンスは1度も欠場せず、全試合出場。放った33本塁打は球団史上最多(当時)。ルーツ監督が「カープは選手がそろっているのに、勝ち方を知らない。君が勝つ野球を教えてやってくれ」と電話で口説いただけのことはあった。ホプキンスは球団史上最高、最強の助っ人となった。シェーンも明るい性格でナインにとけ込み、プロ野球史上初の1試合左右打席本塁打を放つなどファンをも喜ばせた。

新外国人・ジョンソンの初登板準完全試合は75年を思い出させる吉兆


 カープの強いときは、必ず「アメリカ力」が注入されている・・・

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