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2015変化球特集

山崎康晃(DeNA) “消えるツーシーム”の秘密

 

山崎のツーシームに対し「あんな軌道は見たことがない」と、他球団スコアラーからも驚きの声が挙がる


開幕以来、話題となっていのが新人クローザーが投げるツーシームだ。シュートの軌道から鋭く落ちる変化はSFFやスライダーのようにも見える。そんなハイブリッドな魔球が今季のペナントを席巻している──。
写真=内田孝治、大賀章好、高塩隆、前島進

ツーシーム習得の経緯


 最初の注目はほかにあった。今年1月、山崎康晃DeNAの選手寮に入寮したときのことだ。

「最初に投げた変化球がナックル。一番、しっくりきました。どこまで使えるか、堂々と勝負したい。使える自信はあります」。

 握りが2種類で、球速は100キロと140キロ前後。最速151キロの本格派右腕が「秘密兵器・ナックル」の存在を明かした。 開幕先発ローテーション候補に期待されながら、思うような結果を残せなかった。先発枠をめぐる競争からも脱落した。投球スタイルを見直し、特殊球の使用頻度は確かに減った。3月に入ると、中畑清監督は新人右腕をストッパーに指名。チームにとって最大の泣き所だった1球で局面が変わり、ウイニングショット連発が要求されるポジション。キレのある快速球とツーシームを軸に、組み立てていくようになった。

 ツーシーム=直球と同じ軌道で、微妙に変化するクセ球。山崎康は「投げ始めたときはそのとおりというか、バットの芯を外すことが狙いでした」と振り返った。

 亜大1年時。「何かもう一つ、頼れる球種が欲しい」と先輩の東浜巨(ソフトバンク)や九里亜蓮(広島)に教わったのがきっかけだった。1球で打ち取ることができ、先発として長いイニングを投げることにも有効だった球。投げ込み、精度を高めるうちに、縦の変化を習得することに成功した。

「落ちるようになったのは、大学3年ぐらいだったと思います。なぜこういう変化になったのか。正直、自分でも分かりません(笑)」。

 踏み出す足が極端にインステップするフォーム。きっちりと腕が高く上がるだけに、指にかかった力強い球が行く確率が高い。さらに、鋭くシンカー気味にストンと落ちる軌道。

 右打者のヒザ元に食い込み、左打者の外角に逃げていくため、他球団のスコアラーからも「あんな軌道は見たことがない。魔球に近いかもしれない」と驚きの声があがったほどだ。

一般的なツーシームの握りから人さし指と中指を広げて握る山崎のツーシーム。フォークやSFFのようにリリースでは“抜く”感覚だろう



軌道はフォークに近い


 開幕からハイペースでセーブを積み重ね、ここまで(6月11日現在)リーグトップの19セーブを記録している。被打率を見ても右打者に.171(35打数6安打)で、左打者も.167(72打数12安打)と封じ込めている。

 6月9日の楽天戦(コボスタ宮城)では、同点の延長12回にプロ初被弾となるサヨナラアーチを献上。

 打ったペーニャは「スプリット(ツーシーム)が落ちなかったんだと思う。事前に直球やスプリット、スライダーとすべての球種が素晴らしいと聞いていた。直球とスプリット。この2つに絞らないと厳しいと思って、打席に入った」と対応の難しさを実感した。

 佐々木主浩のような絶対的な守護神を目指し、お立ち台で「小さな大魔神になります」と誓ったことがある。「本家」の決め球はもちろんフォークで、女房役を務めることが多い高城俊人も「落ち方とか軌道を見ても、ほとんどフォークと言っていいと思いますよ」と説明した。

 それでも、ツーシームと表現する理由は……。

「(亜大の)先輩に教わったのがツーシームなので。感謝と敬意はずっと忘れずにやっていきます」。

 謙虚な性格と尽きない向上心、そして魔球には無限の可能性がある。

PROFILE

やまさき・やすあき●1992年10月2日生まれ。東京都出身。177cm83kg。右投右打。帝京高、亜細亜大を経て2015年ドラフト1位で横浜DeNAに入団。開幕から抑えを任され、150キロの真っすぐとツーシームでクローザ―として定着。今季の成績は31試合1勝2敗5H19S、防御率は2.12(6月11日時点)

黒田は“動かして、“外す”ツーシーム



 山崎のツーシームが空振りが取れる、決め球としてのツーシームだとすれば、ベテラン・黒田博樹(広島)のそれは、繊細なコントロールでバットの芯を外す職人技が光る変化球。ボールをわずかに、意図的に動かすことで打者に本来のスイングをさせないピッチングだ。中でも黒田が得意としているのが、左打者のインコースのボールゾーンからツーシームの軌道でボールを動かして、ストライクゾーンに入れてくる“フロントドア”。魔球と称され日米の打者を幻惑している。

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