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元巨人チーフスカウトが斬る今年のドラフト候補

 

今号では2015年ドラフトの有力選手を紹介していくが、本誌お馴染みの元巨人チーフスカウト・中村和久氏はどのようにドラフト戦線を評価しているのだろうか。「中間報告」していく。

上位候補は若干少なめ


 現時点で今年のドラフト上位候補に挙げられる選手は、例年よりも若干少ない印象を受ける。そんな中、迷わず1位候補になるのは大学生投手では明大・上原健太、富士大・多和田真三郎、仙台大・熊原健人。高校生投手では県岐阜商・高橋純平、東海大相模・小笠原慎之介あたりだ。

 上原は今春リーグ戦前に左手人さし指に裂傷を負った影響で出遅れたが、ここへ来て復調の兆しは見える。ユニバーシアード日本代表では抑えを担う。短いイニングの集中力はあるだけに、彼本来の投球を取り戻す契機になると見ている。多和田は右肩に不安を抱えて全日本大学選手権では登板を回避したが、潜在能力は高い。秋に普通に投げられれば問題ない。仙台大の熊原は昨年に比べて球威、制球力が成長した。決め球のフォークもプロで通用する。

 今春、評価を上げたのは大商大・岡田明丈、東洋大・原樹理の両右腕。岡田は全国舞台で実力を発揮し、一躍上位候補に躍り出た。原は東都二部リーグで8勝を挙げ、連投に耐えるタフな一面を見せた。

 東農大北海道オホーツクの井口和朋、立命大・桜井俊貴も試合をつくれるタイプの投手で、人気が出そう。一方で秋までアピールが必要な投手も多い。

 昨年の大学選手権優勝の東海大の大型右腕・吉田侑樹、帝京大・西村天裕、早大・吉永健太朗は昨年の状態に戻すことが求められる。

 駒大・今永昇太は左肩を痛め今春は登板がなかっただけに、秋の投球が大事になる。

 県岐阜商・高橋は150キロを超える直球だけでなく制球力も良く、先発完投型。東海大相模・小笠原は左投手で140キロ中盤の球を投げられるのが最大の魅力だ。

社会人は都市対抗次第


7月18日開幕の都市対抗でのアピール次第で社会人投手も上位候補として人気を博しそう。写真は2年目の成長を見せる富士重工業・小野



 野手では明大・高山俊、慶大・谷田成吾、青学大・吉田正尚の外野手の左打ちトリオが順調。そろって日本代表入りを果たし、大舞台の経験はプラスになるだろう。

 春に急成長したのは早大・茂木栄五郎。長打力もあり、上位で消えるレベルになった。

 立大・大城滉二は今春はリーグ通算100安打クリアの重圧から、成績を落としたが、打てる遊撃手だけに秋の結果次第で順位は上がる。オリックス・安達のようなタイプになれる素材だ。

 国学院大・柴田竜拓の遊撃守備はすぐにでもプロで通用する。課題の打撃を磨いてくれば楽しみだ。

 高校生では関東一・オコエ瑠偉、天理・舩曳海が面白い素材。足と肩が魅力で、夏の試合はスカウトが追うことになるだろう。

 社会人は大卒2年目の投手が順調に成長している。富士重工業・小野和博、日立製作所・猿川拓朗、ホンダ・石橋良太、JR東日本・東條大樹はチームの柱として登板する機会が増えている。レベルの高い社会人の打者との対戦で、投球術が身についてきている印象だ。都市対抗を含め、今後の結果次第で即戦力として上位指名される可能性はある。

 今年は例年以上に、ドラフト直前まで各球団のスカウト陣の動きは慌ただしくなることが予想される。補強ポイントなど現場とのすり合わせ次第では、競合を回避する球団もあるだろう。

PROFILE


なかむら・かずひさ●1947年10月6日生まれ。三重県出身。高田高から名古屋商科大へ進み、70年にリッカーへ入社して都市対抗2度出場。74年限りで引退後はマネジャー、コーチ、部長代理を経て82年に監督就任。元阪神・中西らを育て、84年にチームが活動停止。85年に巨人スカウトへ転じ、87年から9年間は近畿・中国地区を担当、06年から4年間は球団代表直属チーフスカウトに。岡島、元木、橋本清、高橋尚、阿部、野間口、亀井、山口、金刃、長野らの入団に尽力した。09年12月限りで巨人を退団し、ベースボールアナリストとして取材活動中。
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