今年は3年ぶりに前田健太がポスティングシステムを使いドジャースと8年契約を交わした。今回は、その契約内容とともに付帯条件やオプションが大きな話題になった。そこで、現役メジャー・リーガーでこの制度を使って契約した選手たちの当時の契約内容を調査してみた。今まではあまり大きく扱われなかったがやはり付帯条件やオプションなども高待遇だったのだ。一般人、そして現役プロ野球選手も羨やむ、その内容を紹介しよう。
※1ドル=118円換算(2016年1月15日時在)、写真=Getty Images

子どもに夢を与える場所

　現役日本人メジャーのポスティングシステムで入団が決まった直後の契約内容は下記のとおり、どれも破格の待遇ばかりだ。2000年オフ、イチロー(現マーリンズ)のマリナーズ入りが決まり、大型契約を交わしたときは、世間を驚かせた。その契約の額の大きさもあったが、各賞、タイトル獲得に合わせボーナスが発生し、オプションでは日本とシアトルの往復航空券がファーストクラスで往復4回が付くことなどが分かり、メジャー・リーグのすごさがあらためて浮き彫りになった。

　その後、01年オフに石井一久(現解説者)が同じようなオプションが付いた契約でドジャースへ。ポスティングでメジャーに渡れば高待遇が付いてくることは常識となった。もちろんFA移籍で高額契約を結ぶ選手たちも、その恩恵をこうむっていた。

　その後、松坂大輔、ダルビッシュ有が当時では考えられない高額入札金と超大型契約+高待遇オプションで契約を結び、そのたびに大きな話題となった。一方で、岩村明憲(現BC福島監督)や青木宣親(現マリナーズ)が低金額入札で契約を結んだが、ここでは大きなオプションは付かなかった。やはりメジャートップ選手クラスの評価でないと、高待遇が見込めないことも分かった。

　入札金額の上限が決められた後も、田中将大(現ヤンキース)に高待遇オプションが付いた。今回の前田健太も、高待遇オプションが付いたが、航空券がビジネスクラスだった部分は、低額年俸での契約と結びついていることが分かる。

　メジャーに認めてもらえるような選手になれば、これだけの高待遇が待っている。まさに“アメリカンドリーム”。メジャーが、お金の面で子どもたちに夢を与える場所であることは間違いない。

田中将大[ヤンキース/投手]

◆2013年オフにヤンキースと契約。2000万ドル(約23億6000万円)で入札
◆7年契約総額1億5500万ドル=約182億9000万円(2014年〜20年)
◆年俸内訳=2014〜19年は2200万ドル(約25億9600万円)、2020年は2300万ドル(約27億1000万円)
◆2017シーズン後に契約のオプトアウト権あり
◆トレード条項選択権あり(フル)
※オプトアウトとは決める、「選ぶ」の意味で、自ら選んで契約を途中で放棄すること。選手は長期契約を望む一方で、契約の際に年俸が固定されてしまうデメリットもある。活躍次第では翌年に大幅な昇給が見込めるため、オプトアウトの条項を盛り込むことで、契約途中で新しい契約を結び直し、またFAになることが可能となる。この条項が認められるのは、超一流選手のみ。

オプション
◆日本とニューヨーク間4回分の往復のファーストクラス航空券
◆住宅手当5万ドル(約590万円)
◆引っ越し代3万5000ドル(約420万円)
◆通訳年俸8万5000ドル(約1000万円)

ダルビッシュ有[レンジャーズ/投手]

◆2011年オフにレンジャーズと契約
◆5170万3411ドル(約61億円)で入札
◆6年契約総額5600万ドル=約66億円(2012年〜17年)
◆年俸内訳
　-2012年550万ドル(約6億5000万円)
　-2013年950万ドル(約11億2100万円)
　-2014年1000万ドル(約11億8000万円)
　-2015年1000万ドル(約11億8000万円)
　-2016年1000万ドル(約11億8000万円)
　-2017年1100万ドル(約12億9800万円)
◆プレーヤーオプションあり

オプション
◆12〜16年の間で故障者リスト入りがなければ80万ドル(約9440万円)等
◆パフォーマンスボーナス
　-ア・リーグ新人王、オールスター出場なら各5万ドル(約590万円)
　-ゴールドグラブ、LCS MVPの場合各10万ドル(約1180万円)
　-ワールド・シリーズMVPの場合15万ドル(約1770万円)
　-ア・リーグMVPまたはサイ・ヤング賞の場合25万ドル(約2950万円)
※サイ・ヤング賞=2位の場合20万ドル(約2360万円)、3位の場合15万ドル(約1770万円)、4位の場合10万ドル(約1180万円)、5位の場合5万ドル(約590万円)

イチロー[マーリンズ/外野手]