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特集・イチロー 3000安打達成

イチロー3000本の軌跡・マリナーズ編〜センセーショナルな幕開け

 

2000年オフ、日本人野手として初めてメジャー契約をマリナーズと交わしたイチロー。周囲は本当に活躍できるのか?という疑いの目で見ることも多かった。イチローはそれを跳ね返し、次々とメジャー記録を塗り替えていき、MLBを代表する選手にまでのぼり詰めた。
文=木崎英夫、写真=Getty Images

2004年10月1日、年間258安打のシーズン最多記録を塗り替えたイチロー。打撃フォームでの心地よい構えを見つけて記録更新となった[最終262安打]


3年やって一人前、強い精神力でスターへ


 日米通算4257安打でピート・ローズを超えた6月15日の試合後、イチローが発した言葉を覚えているだろうか。

「常に人に笑われてきた悔しい歴史が僕の中にはある」

 日本プロ野球で数々の記録を塗り替えた後、海を渡るとき、贈られた激励の言葉にはシニカルな匂いが漂うものもあったという。両リーグ最多安打とア・リーグ新人王、盗塁王、さらにはMVPをも手中に収めた4冠デビューの始まりも、そうだった。当時のピネラ監督は打率2割台後半、30盗塁と予想。オープン戦初戦を前に取り囲んだメディアの目も半信半疑。有名投手とのオープン戦初対決を前に「ヒットを打てるか」と問われ、「一生忘れない」と心にしまい込んだ。

“逆風”を受けながらも前のめりに疾走し、吐き気まで覚えた重圧にも屈することなく、デビューから3年連続の200安打を達成した。信条の「3年やって一人前」を貫いた精神力は、その翌年の大飛躍を下支えする。

 2004年、ジョージ・シスラーが持つ年間257安打を84年ぶりに塗り替える快挙を成し遂げたイチローは、試合後の会見でこう明かした。

「日本でどんな実績があっても『メジャーをなめんじゃねえぞ。どれだけのもんだ、お前が』という雰囲気をものすごく感じた」


日本人野手初のメジャー・リーガーとして01年の開幕を迎えた。「メジャーをなめんじゃねえぞ」の雰囲気を感じながら、バットで答えを出していった


 孤独をあえて身にまとい突き進んだイチローは、偉大な先人を超え、周囲の目線のレベルを変えてみせた。

 あれは、04年の暮れも押し迫った12月30日だった。神戸で会ったイチローは、「進化という言葉を使うなら今」と切り出し、その年の大記録を振り返った。

「これまで僕はヒットに必然的になるような当たりがヒットになるものだと思っていた。でも、それだけでは増えない。限界がある」

 腐心の配球と被安打率が低いゾーンを突いてくる相手投手から、1本でも多くのヒットを出すための思考の転換は、足元を見直すことになる・・・

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