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奥深き二塁手の世界

4つのテーマで斬るセカンド守備の神髄 高木豊(元大洋ほか)

 

小柄で非力なタイプが二塁手像としてイメージされたのは過去の話。現代では捕手と同様に難易度、重要度ともに高いレベルを要求される。ここではそんなセカンド守備の奥深き世界を、高木豊氏の視点から探っていく。


THEME.I 現代野球における「良い二塁手」の条件


「堅実さは大前提で、遊撃手以上の肩の強さがあること」(高木)

 ミスをしないこと、つまり堅実さ、それを可能にする技術力と頭脳は語らずとも必要なベースにあるべき要素です。また、内野のリーダーであること。やはり、同じセンターラインでも遊撃手は肉体的な負担が大きいので、サインプレーなど、統括することができる選手が望ましいです。そして現代の野球では、何と言っても肩の強さが一番に挙げられるのではないでしょうか。

 二遊間のゴロを反転して一塁へ送球、また、ダブルプレー時の送球も地肩の強さが求められ、以前から必要な要素の1つではありました。これに加えて一昔前よりも球場が広くなったことに伴い、よりその必要性が増しています。右中間や一塁線を抜けた当たりが三塁打になるケースが多くなっていますから、中継プレーに入る二塁手には、長い距離を投げ、三塁への進塁を食い止めることが求められるわけです。現代の右翼手が外野の中で最も肩の強い選手がチョイスされる傾向にあるのもそのため。以前は体の小さい、体力的に劣っている選手を二塁に置いたり、『ライパチくん』なんてマンガもありましたが、この20年の間でその考えは完全に変わりました。プロ入り後、遊撃手から二塁手へのコンバートが多いのもうなずけますね。

 これらの条件を踏まえ、現代の“良い二塁手”を考えると、一番は菊池涼介(広島)、次いで藤田一也(楽天)、山田哲人(ヤクルト)が挙げられます。菊池はすべて兼ね備えていますが、特筆すべきは守備範囲の広さでしょう。読みもあり、ファンも見ていてワクワクする選手のはずです。藤田はグラブさばきが抜群にうまい。ベテランの域に入り、経験からくる読みも的確。菊池に比較すると脚力が劣るのが残念ですが、ミスがなく安心感があります。山田はボールにかぶさるような捕り方のせいでスローイングが乱れることがありますが欠点はそこだけ。年々うまくなっている選手でこれからさらなる成長が楽しみです。

 今季は守備固めで出場機会も限られますが、阪神大和も忘れてはいけません。二塁守備で言えば、菊池と双璧でしょう。センスの塊で、例えば正面の打球に対し、二塁手は下がって捕球しても良いんですが、大和は本能的にできてしまう。外野もうまいですが二塁で継続して起用してほしいですね。ちなみに、私が見てきた中で最もボールの扱いがうまかったのは元巨人の篠塚(篠塚和典)さんです。ボールの殺し方がピカイチで、グラブに入った瞬間、ウソのように打球の勢いが失われていました。

■高木豊氏が選ぶ現役で最も優れた二塁手 大和(阪神)

「菊池涼介と双璧をなす」と阪神・大和のセンスの良さを高木氏は絶賛。現在は上本博紀の先発を受けての守備固めがメーン



THEME.II 大胆なポジショニングを可能にする根拠


「観察を怠らないこと。1球たりとも同じ場所を守ることはない」(高木)

 そもそも定位置はあってないようなもの。下図で示したものがオーソドックスな位置ではありますが、極端に言えば一番から九番まで打者に応じて、そして1球たりとも同じポジションで同じ形(足の向きや体の向きなど)に守るということは、ありません。

 ポジションを決定していく根拠の1つがスコアラーがそろえてくれるデータです。例えば、私の現役時代、正田耕三(元広島)という両打の好打者がいて、左打席では変化球は引っ張り、真っすぐは流すという極端な傾向を持っていました。こういう打者の場合は捕手のサインを見ながら、ポジションを決めていきます。とはいえ、変化球であったとしても、球速のある変化なのか、遅い変化なのかでも判断は異なります。加えて、自分のチームの投手の調子が良いのか、悪いのか。コントロールよく投げられていれば、予測したところに来るものですが、これが甘くなると話は別。どのように失投しているかも見ておく必要があります。さらに打者の調子も加味しなければいけません。速いボールに遅れているのか、変化球に合っているのか、いないのか。つまり、最も大切なのは“観察を怠らないこと”でしょう。

 ダイビングキャッチで派手にアウトを取ることだけがファインプレーではありません。「なぜあそこにいたのか?」というポジショニングによるファインプレーがクローズアップされることもありますが、注目すらされないようなわずかな移動でヒット性の当たりを平凡なゴロに見せる。こういったアウトを当たり前に取る・・・

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