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プロフェッショナル解説 捕手の視点

谷繁元信が捕手視点で語る変化球 「ストライクが取れる変化球が1つあればOK」

 

その道を極めた男の目には、変化球はどのように映っていたのか。まずは捕手として史上最多の2937試合出場を誇った谷繁元信氏が登場。その手で受けた変化球で印象深かったのは?
取材・構成=小林光男、写真=BBM


打者が追いかけて空振りするスライダー


 横浜(現DeNA)、中日で27年、マスクをかぶってきて、数多くの投手の変化球を受けましたがNo.1を選ぶことはできません。球種によって、それぞれに優れている点がありますから。なので、各球種でNo.1を挙げていきたいと思います。

 まず、スライダーは斎藤隆さん(元横浜ほか)。とにかく曲がり幅が大きい。手からボールが離れた瞬間、スライダーだと分かるんですが、打者のイメージ以上に外へ曲がるので右打者はボールを追いかけて空振りする。内角へ投じた場合は右打者が一瞬身を引いてしまう。そこからストライクゾーンへ曲がるのですが、右打者は手が出なくて見逃す。サインによって、内外へ投げ分けてくれたのでリードしていて助かりました。

 吉見一起(中日)のスライダーも良かったですが、斎藤さんとは異なり曲がり幅は小さい。出だしはストレートと同じですが、そこから打者の手元で少し曲がる。表現すればスルスルスルとバットから逃げていく。タイミングが合いづらい軌道で、打者がミスしてしまうんですよね。

 左投手のスライダーで言えば岩瀬仁紀(中日)。これもバッターの手元で曲がり始め、さらに大きく曲がる。懐に食い込んでくるので、右打者は打てども、打てどもファウル。なんとかフェアゾーンに飛ばそうとしても、詰まっていましたね。

 フォークはもちろん佐々木主浩さん(元横浜ほか)。50センチくらい落ちる感覚。僕が受けたフォークはだいたい揺れて落ちるんですけど、佐々木さんのフォークは回転がかかっている。カーブのように曲がって落ちる。カーブがより鋭く、速くなった感じですね。ほかに、そういうフォークを投げる投手はいなかった。さらに左打者には中に入らないように外へシュート気味に、右打者には左打者とは逆方向に落とす。ほかにもカウントを取る、空振りを取る2つのフォークを投げ分けていましたね。

落差の大きい佐々木のフォークは強烈な武器となった


 全盛期の盛田幸妃さん(元横浜ほか)のシュートも、狙われても打たれた記憶はありません。右打者の内角へグッと食い込んでいく。普通、シュートは曲がりながら落ちるんですが、盛田さんは違う。極端に言うと浮き上がりながら打者に向かっていく感じでした。打者も相当怖かったでしょう。僕は「敵じゃなくて良かった」とよく思っていましたから。

 チェンジアップは川村丈夫(元横浜)。きれいな回転もかかって、出だしは完全にストレートで途中からスピードが落ちていく。見た目は遅いストレート。現在で言えば金子千尋(オリックス)の・・・

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