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広島 一岡竜司 見つけた「居場所」

 


カープの背番号30が躍動している。昨オフ、巨人へ移籍した大竹寛の人的補償で加入した一岡竜司は、新天地でプロ入り初の開幕一軍入りを果たすと、150キロ超えの速球とキレのあるフォークで「勝利の方程式」の一角を任されている。5月8日現在、10ホールドはリーグトップタイで防御率は0.00。右腕が広島の地で見つけた「居場所」は、自らの力で勝ち取ったものだ。
写真=前島進、BBM

見つけた「居場所」

 お立ち台へ上がると、日に焼けたベビーフェースが笑顔でほころんだ。「カープに来て、“ちかっぱ”(とても)良かったっちゃ!」

 今季最多となる3万2041人の大観衆に見届けられたプロ初勝利、しかも相手は昨年まで在籍していた古巣・巨人。故郷である福岡弁で表現した喜びにはさまざまな思いが込められていた。

 4月27 日の巨人戦(マツダ広島)、0対0で迎えた延長11回に一岡竜司は3番手としてマウンドへ上がった。先頭の松本哲也を三ゴロに仕留めると、最速149キロの直球で四番・アンダーソン、五番・村田修一には力勝負を挑んで三者凡退。「巨人には特別な思いがある。おととい(25日)までは力みがあったが、今日は自分の仕事に集中し、リラックスして投げられた」。

 チームはその裏、四番・エルドレッドのサヨナラ3ランで劇的勝利。勝利の瞬間は、直前までベンチ裏でアイシングをしていたが、この日の先発だったエース・前田健太から「サヨナラになるぞ! 早く来い!」と声を掛けられダグアウトへ。アイシングをしたまま、歓喜の輪へ飛び込んだ。

▲4月27日の巨人戦( マツダ広島)、延長11回に登板し古巣を無失点に抑える好投。その裏、エルドレッド(左)の3 ランでサヨナラ勝ちを収め、プロ初勝利を手にした


 同日時点でチームトップとなる13試合目の登板で、防御率は依然0・00。球威ある直球とキレのあるフォークを武器に、リーグトップタイとなる8ホールドを記録している。

アピールしなければ

 2012年ドラフト3位で巨人入り。昨年末、広島から巨人へFA移籍した大竹寛の人的補償でカープ入団が決まった。しかし、右腕が飛躍することになったきっかけはもう少し前にさかのぼる――。

 昨季終了後、プエルトリコのウインター・リーグへ派遣され、異国の地で汗を流した。周囲はハングリー精神あふれる同世代の若者ばかり。「アピールしないと自分の居場所はない」と、自慢の剛球に磨きをかけた。右足首のねん挫により、途中帰国を余儀なくされたが「次のシーズンへ向けて肩の状態をキープしたまま、練習を続けていた」と、オフも厳しいトレーニングを続けていた。

 そして訪れた広島への移籍。新天地ではキャンプ初日から猛アピールを続け、かつて広島にも在籍した巨人・豊田清二軍投手コーチ直伝の「高速フォーク」が冴えた。「ストレートとフォークのコンビネーションが素晴らしい。打者はとても嫌だと思う」(広島・山内泰幸投手コーチ)

 先発も視野にプレシーズンを過ごしたが、首脳陣は中継ぎでの起用を決断。そして、永川勝浩ミコライオへと続く「勝利の方程式」の一角として、プロ入り初の開幕一軍入りを果たした。

「もともと投げることが大好き。いまは一軍で投げられることに喜びを感じるし、感謝しています。毎日でも投げたいし、1試合でも多くチームの勝利に貢献したい」

 カープ、古巣・巨人、そしてこれまで自分を支えてくれたすべての人に感謝の気持ちを表す。大分・藤蔭高卒業後は、パソコン系の専門学校・沖データコンピュータ教育学院へ進んだ。在学中はピザ店でアルバイトをするなど異色の経歴を持つ苦労人。それだけに、ようやくつかんだ現在の「居場所」には特別な思いがある。「これからも、1試合1試合を死ぬ気で投げます」

▲高校卒業後は「パソコンの資格を取りたかった」と、専門学校であるコンピュータ教育学院へ進んだ。卒業時には「Microsoft Office Specialist」の資格を取得した


 23年ぶりのリーグ優勝を目指す赤ヘル軍団。カープが最後に美酒に酔った91年生まれのセットアッパーは、悲願のリーグ優勝への使者としてこれからもフル回転を誓っている。

PROFILE
いちおか・りゅうじ●1991年1月11日生まれ。福岡県出身。179cm82kg。右投右打。大分・藤蔭高から沖データコンピュータ教育学院へ進み、12年ドラフト3位で巨人入団。ファームでクローザーを務め、新人年に一軍デビューを果たす。13年オフにFA移籍した大竹寛の人的補償で広島入り。セットアッパーとして結果を残し、プロ入り初の開幕一軍入り。永川勝浩、ミコライオとともに「勝利の方程式」の一角として活躍中。今季の成績は13試合登板1勝0敗0セーブ8ホールド、防御率0.00(4月30日現在)。

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