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28年ぶりとなる2年連続Bクラスの屈辱は嫌というほどその胸に刻まれた。新世代の竜のリードオフマンにして選手会長は、先頭に立ってリベンジへの道を突き進むつもりだ。
取材・構成=吉見淳司 写真=江見洋子

手に入れた自信


 NPB4年ぶりとなるシーズン200安打へ順調な滑り出しを見せた大島洋平。夏場の失速で大記録には届かなかったものの、終盤には目を見張る追い上げを見せた。試行錯誤を経て、確かにつかんだ感覚がある。

 シーズンで残した成績だけを見ると、もし自分以外の選手が同じ数字を残していたら「すごい」と感じるでしょうし、あまり僕自身が出せた結果だという実感はないんです。ただ満足はできていなくて、「もうちょっと上に行きたかった」という気持ちの方が強いですね。

 夏場に調子を落としてしまった時期もありましたし、そこでもっとやれていたんじゃないかと思う。来年は最初から最後まで調子を保ってプレーできるようにしたいですね。

 今年はずっと「一番・センターをやりたい」という気持ちを持ちながら過ごしていました。決めるのは(谷繁元信選手兼任)監督なので出たところでやるだけですけど、来年も誰にも譲らないようにやっていかないといけないと思いますし、「一番・センターは大島しかいない」というところにまで持って行きたいです。そのレベルまではまだまだですね。

 終盤には最多安打のタイトルも狙える位置にいましたが、僕は残り試合が少なかったし、どれだけ山田(哲人、ヤクルト)君や菊池(涼介、広島)君にプレッシャーをかけられるかという立場でしたからね。一時は追い抜きそうにもなれましたし、結果はしょうがないですね。

 でも、7、8月に調子を落としてしまったところから状態を上げることができて、個人的には最後にいい感覚でシーズンを終えられました。これは来年にもつながると思いますね。長嶋(清幸)コーチに見てもらいながら、バットが自分の意識している軌道から外れていかない、トップからズレないようにということをずっとやってきたのが良かったのかと思います。

 交流戦のときにも結果はすごく出ていて、周りも「調子いいね」と言ってくれていたんですけど、自分の中ではそれほどいいと思えなかったんです。どちらかというと自分では9月に入ってからの方が、「これだったら調子がいいな」という打撃ができていました。

 6月までは結果が出ていたので、手応えがなくてもバッティングを変える勇気はなかったのですが、いざ調子が悪くなったときにいろいろなことにトライして戻すことができた。その感覚は秋季キャンプ中もずっと意識してやっていますし、継続できていますね。

 さらに継続しながら体にしっかり染み込ませて、意識しなくてもいいようになればもっと成績を残せると思います。修正の仕方もある程度はつかめましたし、自分の引き出しも増えたと思いますね。

 猛打賞20回はリーグ最多タイ?固め打ちの秘訣は……ないですね(苦笑)。あったらもっと活躍できていると思います。ただ、一番を打つバッターなので打席が回ってくる回数も多いし、とにかく積極的に、自分の打てる球をしっかり打つことは意識していますね。

 内野安打も持ち味だと思っていますし、バットに当てて転がせば、相手のミスもある。追い込まれたときは強振するよりも、前に飛ばすことを意識するようにはしています。

 昨年までのベストシーズンは12年でしたが、がむしゃらにやっていただけだったと思います。今年はフォームだったり体のバランスだったり、いろいろ考えながら1年を過ごすことができました。去年は成績が悪かったので、何とか挽回する気持ちで臨んでいましたし、そうやって結果を残せたのは良かったですね。

 今年は200安打を目標にしていて、そこまで届かなかったですが自己最多は何とかクリアできました。来年も同じ目標を持ってやっていこうと思っています。

シーズン終盤で得た好調時の感覚は、秋季キャンプでも継続中。来季は個人とチームの目標を両立させるつもりだ



もっと強くなる


 充実した個人とは対照的に、チームは昨年から挽回することはできなかった。足りなかったこと、必要なものをしっかりと見極め、来年こそは雪辱を誓っている。

 チームとしては悔しい結果に終わってしまいましたが、特に良くなかったのは8月ですね。あそこで崩れなければもっと上位に行けたと思います。チームの状態も下がり気味で、ベンチの雰囲気は変わらずにプレーできていたんですけど、どこかに「負けてしまっているな」と不安があったのかな、と思います。

 普通のプレーが平常心でできなかったというのもあります。ありえない凡ミスもしてしまったし、そういうところで普段どおりにプレーできないと勝てない。大きなミスも細かいミスもありましたし、それをできるだけ少なくしないと。

 僕自身もデカいプレーでチームの流れを止めてしまいました。どうしても不安になってしまうんですよね。悪い結果でも自分で責任を取れればいいんですけど、結局はチームに迷惑がかかってきてしまうので。もっと個人的に強くならないとダメだと実感しましたね。

 今年は勝っている試合でも、大差の試合がすごく多かった印象なんです。僕が入ったときの中日は1点差や、ビハインドからでも試合に勝つことが多かった。強いチームはそういう接戦で勝てるチームだと感じましたね。ここぞという場面で1点を取れる野球をしていかないと。

 上位3チームにも力で劣っていたというよりも、僅差で負けることが多かったと思います。終盤までは同点でも、上のチームはポンと点を取ったり、こっちはサヨナラの場面でもなかなか点が入らなかったり。

 やっぱり打つことに関して言えば、勝負強さがかかわってくると思います。守備・走塁だと、例えばバントを使わなくても進塁打でランナーを進めたり、あるいは盗塁してからのバントとか、ショートゴロの間にファーストランナーがサードに行ったり……数字には残らない走塁や、見えないファインプレーをもっとできるように、僕自身もレベルを上げていかないといけないと思うし、それができれば勝てるチームになると思います。

 チームは全体的に世代交代が進んでいないと言われますが、若い選手は自分自身で積極的にやらないと。僕もまだ若手のつもりなのですが、年下もすごく増えていますし、プレーで引っ張っていきたいとは思っています。

 若い選手もチャンスはもらっているんですよね。それをつかめるかどうかは自分次第。練習は本当にしっかりやっていますし、後は生かせるかどうかだけ。それがプロ野球の世界なのですが、結果を出せなければいくら練習をやっていても意味がないですからね。僕も1年目から試合に出してもらいましたが、ホームランを打てるタイプではなかったし、複雑には考えずに「自分の役割をこなそう」とだけ思っていましたね。

 必要以上に力んでしまうときもあるんですけど、そういう場合はたいてい失敗しています。それなら、練習でやっていることをそのまま試合で出さないと。試合になったら変わるというわけではなくて、普段から意識していることを出していければいいんじゃないかと思います。

 僕は来年も選手会長を務める予定ですが、今年の経験を生かせそうです。今年も2、3回はミーティングをやっていたんですが、正直、監督に「ちょっと集めてみたらどうだ」と言ってもらったのがきっかけでした。「やらないといけないかな」と思っていたところで監督がポン、と後押しをしてくれたんです。ミーティング自体が必要ない、というのが一番ですけど、もし次に必要になったときには自分から動けそうです。

 この2年は低い順位で終わっているし、みんな勝ちたい中でこういう結果になってしまい、悔しいというのはチームの誰もが思っています。来年こそ何とか挽回したいですね。

今季の中日ドラゴンズは、67勝73敗4分け、勝率.479、チーム防御率3.69、チーム打率.258の4位。大島は「悔しいとチームの誰もが思っている」と振返った



逆襲へのKEYWORD

「接戦を制す」僕も含めてですが、全体的に得点圏打率が低いですよね。僕の場合はチャンスでも普段どおりを意識していたのですが良くなかったので、来年はちょっと変えないといけないですね。フォームをどうこうではなくて、得点圏だったら相手投手も力が入りますし、いつもの球をイメージしていたら差し込まれることが多い。ちょっと調子がいいときのイメージでやっていかないといけないな、と思っています。

 守備、走塁も秋季キャンプでイチからやり直しているので、もうワンランク上げたいですね。なかなかシーズン中にゆっくり考えて練習することはできないので、すごく充実した練習ができていますし、僕だけでなく各自が意識を持っていろいろな課題に取り組んでいます。個々のレベルアップができればチーム力も上がると思います。

PROFILE
おおしま・ようへい●1985年11月9日生まれ。176cm74kg。左投左打。愛知県出身。享栄高、駒大、日本生命を経て10年ドラフト5位で中日入団。攻守走三拍子そろう好選手としてリーグ優勝した11年から中堅に定着。12年には打率.310(リーグ3位)、32盗塁で盗塁王に輝く。13年のWBCでは左ヒジの違和感もあり最終メンバーから落選。同年オフから選手会長に就任した。今季は2年ぶり3度目のゴールデングラブ賞を受賞。14年成績は141試合出場、585打数186安打2本塁打28打点28盗塁、打率.318。
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