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2014-2017 日本代表戦記
第4回「ならば、いただきましょう、世界一」

 

WBSCランキング12位までの国と地域が集い、世界一を争う新設の大会『プレミア12』が、11月8日、日本で開幕した。一筋縄ではいかない代表戦は、開幕前から波乱含みで……。
文=坂本匠[本誌]、写真=湯浅芳昭、小山真司、高原由香

 ほっと胸をなでおろした。中村剛也の『右手甲の打撲』が再確認されたからだ。11月6日のプエルトリコとの強化試合(ヤフオクドーム)の第1打席で死球を受け、そのまま福岡市内の病院へ直行。「骨には異常なし」との診断を持ち帰ってはいたが、一夜明けた7日、札幌入りするチームを離れ、セカンドオピニオンを求めて緊急帰京していた。

11月6日、死球を受け中村剛也が苦悶の表情を浮かべる



 再検査を必要とするとはどういう状況か。最悪の事態(離脱→メンバー変更)が頭をよぎる。翌日には韓国との開幕戦(札幌ドーム)が控えており、このタイミングでの四番打者離脱の影響は計り知れない。札幌入り後、市内の室内練習場で前日練習を行ったナインにも動揺が広がっていた。なかでも大阪桐蔭高の後輩に当たる中田翔は「おかわりさんはチームの軸です。出ないとなれば、みんなでカバーしないと……」。

 果たして同日午後7時半を過ぎたころ、朗報を携えたおかわり君が、札幌市内のチーム宿舎へとデニム&パーカーのラフな服装で到着(チームはブルックス・ブラザーズの公式スーツ着用で札幌入り)。待ち構えたカメラマンの無数のフラッシュに「撮らないでくださいよ(笑)」。申し訳なさそうな笑顔に、報道陣にも安ど感が広がった。

 そういえば、死球を受けた試合後のミックスゾーンでも、痛みの程度を心配する報道陣をよそに、“避けられなかったこと”を猛省。「恥ずかしいから、あまり聞かないでください。バッターとしては、右手は当たってはいけないから」と高周波治療器を装着した右手をさすっていた。確かに、あの打席のボールは130キロと球威のない直球で、胸元付近のボール球を見極められず打ちに出ての死球だった。

 実は、ここにデータのない投手と対戦する国際試合の怖さが隠されている。この場面、おかわり君の目と脳は、体に向かってくる中途半端な球速の直球を「打てるボール」と判断を下していたわけだから。

 それにしても、頼れる主砲の離脱を回避できて本当に良かった。何しろ、10月9日の出場28選手の発表以降、藤浪晋太郎(阪神)、内川聖一柳田悠岐(ともにソフトバンク)と、投打の中心選手3名がケガなどによる理由で出場キャンセルとなっていたからだ。なかでも、内川と柳田の離脱には、小久保裕紀監督も頭を抱えたことだろう。

 内川については、嶋基宏キャプテンとは別に、「野手陣のリーダー」に指名しており、「2017年(第4回WBC)の世界一奪還へ向けて、“柱”となる存在」と絶大な信頼を寄せていた。前年まで7年連続3割の技術もさることながら、2度のWBC出場を誇る屈指のキャリアが、平均年齢26.2歳の若き侍には必要だった。そんな場面がきっとこの先、出てくるに違いない。

 一方、柳田は初招集となった昨秋の日米野球でMVPを獲得後、今季もトリプルスリーと、人気、実力ともにうなぎ上り。同じくトリプルスリーの山田哲人とともに「一番・山田、三番・柳田」が打線の中心であることを指揮官も明言していたが、この構想ははかなくも崩れてしまった。しかも、柳田辞退が正式発表されたのは代表集合日の2日のこと。直前の日本シリーズには出場していたのだから、ケガの悪化が悔やまれる・・・

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