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高校野球名門校シリーズ「習志野高校野球部」発売のお知らせ
掛布雅之×小川淳司 習志野高OB対談 「あの当時“集合”がイヤでしたね」

1972年夏の甲子園に出場した掛布雅之氏と1975年夏の甲子園では優勝投手になった小川淳司氏。プロ野球の舞台で仕事をする大物2人が「習志野野球」を語り合う。

 

高校野球名門校シリーズの最新刊は野球王国・千葉の象徴として県民や市民の注目を集める習志野高校。多くの関係者への取材と貴重な資料で構成された「習志野高校野球部 〜雑草の如く逞しく〜」より、同校OBの小川淳司氏(東京ヤクルトシニアディレクター)と掛布雅之氏(阪神二軍監督)対談の一部を公開します。
取材・文=佐伯要、写真=菊田義久、BBM

近寄り難い存在だったプロのスーパースター


小川 掛布さん、阪神の二軍監督就任おめでとうございます。

掛布 僕がまたユニフォームを着ることよりも、2015年のシーズンで東京ヤクルトがリーグ優勝したことの方が素晴らしいよ。2014年まで監督を務めていた小川が育てた選手たちが活躍して勝った。もちろん真中(満)監督の手腕もあるけど、小川が下地を作ってバトンを渡したからこそ優勝できたんだからね。やはり、一人の監督の力で勝つのは難しい。球団の歴史のなかでいろんな人がバトンを渡していって優勝がある。小川は習志野OBで初めてのプロ野球の監督。就任したときは「まさか」とは思ったけど(笑)、うれしかったね。

小川 僕が高田繁監督のもとでヘッドコーチをしていた2008年から、掛布さんは毎年キャンプ初日に取材に来てくださいましたね。

掛布 取材に行くと、小川は「これほど腰の低い監督はいないだろう」というくらい気を遣ってくれるから、かえって申し訳ないくらいだったよ。

小川 いつも来ていただいて、ありがたいと思っていました。

掛布 小川は習志野の2学年後輩。卒業してからも気になる存在だったからね。小川が大学、社会人を経てプロへ入ってからも、活躍してほしいと思って見ていたよ。

小川 現役時代、僕にとって掛布さんは話もできない存在でした。高校1年生のときの3年生の先輩という立場は、どこまでもいっても変わりませんからね。ましてや掛布さんはプロでスーパースターでしたから、近寄り難いという思いは強かったですね。

掛布 確かに、高校時代は話したことはないよね。でも、怖くはなかったでしょ? 僕は後輩をたたいたり、正座させて説教したりするのは極端に嫌いだったからね。主将をやったけど、プレーでチームを引っ張るタイプだったと思う。下級生に厳しくする役割は同級生の阿部東司(中大〜電電東京。巨人阿部慎之助の父)におしつけていた(笑)。

小川 当時の習志野には、先輩が後輩を説教する「集合」というのがありましたよね。部室で正座して、先輩たちに叱られる。練習後のグラウンドを整備していると、先輩たちが帰らずに残っているときがある。そうすると「ああ、今日は『集合』があるな」とわかるんですよね。それがイヤでイヤでしょうがなかった。掛布さんがそれを「やめろ」と言ってくださったのを覚えています。

掛布 「もういいだろ」ってね。僕たちのときも「集合」があった。ある日、説教が終わってから、同級生たちと「やってられないよな」と愚痴を言い合っていたら、一つ上の先輩がそれを隠れて聞いていて、また正座させられたことがあったな(笑)。

小川 1年生は朝早く学校へ行って、グラウンド整備をするのが仕事でした。最寄駅から歩いてきた先輩たちが部室へ向かうのを見るたびに、手を止めて「おはようございます!」と挨拶していました。掛布さんは当時流行っていたマジソンスクエアガーデンのスポーツバッグを肩にかけて、竹刀を入れる袋にバットを入れて持っていましたよね。毎日バットを持って帰って練習するのは、すごいことだなと思っていました。

掛布 スパイクとグラブも持って帰っていたんだよ。毎日持って帰らないと、後輩が磨くことになる。そういうのはイヤだった。自分のものは自分で手入れしたかったからね。

小川 掛布さんの姿は、常に目で追っていましたね。習志野に入る前から、掛布さんのお名前は知っていました。掛布さんが2年の夏に甲子園に出られたのを見ていましたから。入学してからは、外野で球拾いしながら、掛布さんがバッティング練習をして守備に就くまでずっと見ていました。僕たちにとって、掛布さんはそういう存在でしたね。

その後も次々に明かされる習志野高野球部時代のエピソード。つづきは、「習志野高校野球部 〜雑草の如く逞しく〜」でお読みください。



高校野球名門校シリーズ13「習志野高校野球部〜雑草の如く逞しく〜」
2016年1月30日発売
ベースボール・マガジン社
定価:1,389円+税



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