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白球ストーリー〜2016年への鼓動〜
密着 楽天・島内宏明「自分自身に打ち勝つことができなければ先は見えない」

 

満足と呼ぶにはほど遠いシーズンだった。故障で出遅れ、わずか25試合の出場に終わった2015年。何かを変える必要があった。とことん自分と向き合ったオフシーズン。プロ5年目、島内宏明は新たな精神と肉体を携え、久米島で2016年シーズンへ向けた戦いをスタートさせた。
取材・文=富田庸、写真=大泉謙也、BBM

これまで故障の多かった島内だが、今年は万全の準備のもとでキャンプイン。勝負の年がスタートした



相次ぐ故障に苦しめられて


 不完全燃焼に終わった昨季を振り返り、ため息交じりに島内が言う。

「春先に左太ももの肉離れをやってしまって満足に練習ができませんでした。6月に復帰してからも、思い切り走れない中でのプレーだったので、どうしても結果がついて来なくて。8月くらいからはスタメンで使ってもらうこともありましたけど、どこか自分の感覚とはズレがありました。なかなか踏ん張る力が入らなかったし、下半身の粘りも足りなかったです」

 結局、打率.203、0本塁打、6打点という物足りない成績が残った。契約更改では野球協約の限度額制限(1億円以下)いっぱいの25%減となる2100万円(推定)でサインした。すべての現実を受け入れざるを得ない状況だった。

 プレースタイルはもちろん自認している。

「走る、守る、打つ。どれも高いレベルでやりたいと思っています。打席で勝負強さを発揮することがチームから求められていることだと分かっていますし、塁に出たらしっかり盗塁も決めていきたい」

 だが、プロ4年間で規定打席に到達したことがない。

「優勝した年は試合には出ていましたけど、レギュラーという感覚はなくて。とにかく無我夢中でプレーしていたという印象です」

 13年、初優勝へ向けたカウントダウンの最中にアクシデントに見舞われた。守備中に左肩を脱臼し、登録抹消となってしまったのだ。結局、リーグ優勝の瞬間には立ち会えず、自宅のテレビでその光景を眺めた。

「あの場にいたかったなという思いはありましたけど、こればかりは仕方ないなと感じました」

 一度狂い出した歯車を元に戻すことは容易でない。故障の影響を翌年以降に引きずってしまう。

 14年は打撃不振もあり66試合出場とその数を減らした。15年の春季キャンプはそのビハインドを取り戻すかのように猛アピール。久米島キャンプ恒例の朝の声出しでは、自身のあだ名「ウナギイヌ」にかけて「今年は特上ウナギになりま〜す!」と、島内らしいユーモアで力強く宣言した。その言葉どおり、対外試合では一時、打率4割超の成績を残す好調ぶりを見せる。この出来に大久保博元監督(当時)も「あれだけ打ってくれたら、当然(レギュラーの)可能性は出てくるよね」と目を細めるほどだった。

 それだけに、冒頭で本人が語った故障離脱は痛かった。肉離れは大学時代からクセになっており、この故障が飛躍への足かせとなっていた。プロでも同じ目に遭うとは……。自らの不遇を嘆くしかなかった。

星野監督の一言で運命の扉が開いた


パンチ力には定評のある島内。打撃力向上も大きなテーマとなる



 強烈な光を放ったプロ2年目の13年。当時、外野の定位置争いは激しく、シーズン序盤は代打や代走での出場が多かった・・・

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