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高山俊 積極性と客観性、二面性を併せ持つスラッガー

 

高山は今後訪れる試練を跳ね返せるのか


 4月5日、伝統の一戦が行われた巨人阪神戦(東京ドーム)の初戦。阪神が8対2と快勝した。その試合後のベンチ裏での金本知憲監督が冗談交じりに「本当に新人ですか?」とおどけてみせた。開幕から一番に起用され続け、この一戦でも4安打と打ちまくり今季3度目のお立ち台に立ったドライチの高山俊のことを金本監督はこう表現した。

「打撃フォームでいじるところがまったくない」

 これが金本監督の高山評だ。キャンプ終盤、二軍キャンプから一軍に合流したときからこの言葉は一貫している。高山本人は「初めてのプロでのシーズンですから、この先どうなっていくのか分からないので、毎日、必死にやっているだけです」と答えるが、それでも12試合(4月7日終了時点)で18安打はチームNo.1。完成された打撃フォームだからこそ、初めて対戦する一軍の投手でも通用するのだ。

 そして現在、一軍で対応できているもう一つの大きな理由として、積極的に打ちに行っていることが挙げられる。ストライクを優先させたい投手はどうしても、ファーストストライクを甘いコースに投げる可能性が高くなる。だからこそ初球から狙っていく。これはチームの方針の一つである。

 もちろん、一流投手にかかれば、一番を打つ高山と二番の横田慎太郎の2人で、2球で2アウトになってしまうこともあり、相手チームに流れが行ってしまうこともある。しかし、それでも金本監督は初球から強くバットを振るように言っている。だからこそ高山は積極的に初球からどんどんバットを振ることができ、それが活躍につながっているのだ。

「今は相手に僕のデータがないと思いますので、そのデータがそろえば、必ずカベにぶつかると思うんです。そのとき、自分でどうするかだと思います」

 囲み取材やインタビューで必ず出てくるフレーズに「必死にやるだけです」というものがある。しかし、一方で前述のように冷静に自分を見つめている高山もいる。確かにシーズンが進めば研究し尽くされ、弱点のコースを徹底的に攻められるだろう。

 しかし、自分自身を客観視できる力も持ちあわせている高山は、今後訪れる試練さえも、跳ね返してしまう力を備えているはず。そのカベをどのくらいの期間で乗り越えられるのか……それさえも、ファンの楽しみと思わせることができるスラッガー。それが高山俊なのだ。

文=椎屋博幸(阪神担当)、写真=BBM
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