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低迷西武のキーマン森友哉 打棒復活までの苦しみと捕手の可能性

6月24日のロッテ戦では今季初の1試合2本塁打。思い切り良い打撃で上位勢を苦しめたい(写真=BBM)

 

肉体的負担を減らすためのフォーム改造が裏目に


 開幕前、西武がここまで低迷すると予想する人はどれだけいただろうか。球界屈指の「重量打線」を誇り、岸孝之菊池雄星の2本柱を中心とした投手陣もタレントがいないわけではない。にもかかわらず、前半戦は35勝49敗2分けで借金14の5位で折り返すという事態に陥った。すでに自力優勝の可能性は消滅しており、「CS進出」の可能性を信じて巻き返しを期す「獅子軍団」。3年目・森友哉が、後半戦はもちろん来季をも含めた「復権」のキーマンになりそうだ。

 まずは、今季の森を振り返ってみよう。2月の春季キャンプ(宮崎・南郷)では本格的に捕手の練習を再開。本人はもちろん球団としても強打の捕手として育成するというテーマのもとにスタートした。

 だが、オープン戦の途中に「打撃に守備面の影響が出ている」という理由から、首脳陣は当面は2年目と同じく打撃に専念させることを決めた。田邊徳雄監督も「打線には欠かせない。せっかくの打撃を生かすための判断」と説明した。

 ところが、シーズンが開幕しても打撃の調子が上がってこなかった。「とにかく自分は打たないとチームに貢献できないんで。でも、スイングができていない」。3月25日のオリックスとの開幕戦(西武プリンス)から4試合連続でベンチスタート。4月も13試合で38打数6安打(打率・158)で、極度の打撃不振から4月23日に二軍降格を告げられた。だが、この苦い経験が転機になった。 5月31日に一軍に昇格し、6月は打率.355、3本塁打という成績を残してみせた。見事に復調を印象づけた。

 復調の最大の要因は、フォームにあった。スタンスが広く、重心が極端に低い特徴的なフォームから繰り出されるフルスイング。森はそんな自らの代名詞でもあるスタイルをあえて「修正」していたという。

「重心が高くなったのではなくて、高くしていたんです。シーズンを通して考えたときに、下半身の負担を減らそう、と」

 2年目の昨季はプロ入り後初めてフルシーズン一軍でプレーした。DHでの起用が主だったが、肉体的な負担の大きさを実感した。「下半身に負担をかけないために、重心を高くしてみよう」。これが裏目に出た。 二軍に降格したことをきっかけに、発想を転換する。

「負担を掛けないようにするのではなくて、負担に耐えられる下半身をつくればいい」

 今では日々の練習では必ず下半身を鍛えるメニューを欠かすことはない。交流戦が終わり、リーグ戦再開初戦となった6月24日のロッテ戦(上毛敷島)では今季初の2本塁打をマーク。「打撃が自分の形になってきている」と手応えを口にした。首脳陣の評価も高まっている。

 嶋重宣打撃コーチは「開幕直後はフォームの重心が高かったし、メンタル的にもモヤモヤしたものを抱えながらやっていたのは感じていた。あえて、こちらからいろいろ言わなかった。もともと持っているものは素晴らしいからね。まだまだ子どもの部分があるけど、どうやって課題に向き合っていくかという部分を見たかった。最近は自分のスタイルでやれるようになっている」と成長を感じ取っているようだ。

 打撃の「スランプ」は乗り越えた。守備に目を向けると「捕手・森」についてもひとつの方向性が見えつつある。潮崎哲也ヘッド兼投手コーチは「今は打撃を生かすための起用だけど、捕手としての可能性を消すことはない。幅広く選択肢を探っている状態」と説明する。

 この言葉を証明するかのように、7月10日のオリックス戦(西武プリンス)では9回の守備からマスクをかぶり、2年ぶりに一軍で「捕手・森」としてプレーした。点差を離されて負けている状況ではあったが、来季以降を見据えた起用だったことは間違いない。

 今の西武に必要なのは「起爆剤」になりうる存在だ。「森が活躍すればチームは乗ってくる。そういうプラスアルファを持っている数少ない選手だよ」と潮崎コーチ。

 打席に入る際の登場曲は、20年以上前に放送されていた人気番組のテーマソング「夢がMORIMORI」。昨季途中に先輩たちに勝手に決められた曲だが、20歳の森は「原曲は知らないっすね」と笑う。今年1月のチームの必勝祈願では絵馬に「もりもり頑張る!」と書いて奉納していた。開幕前に自らが思い描いていたような活躍が出来れば、チームもここから息を吹き返すかもしれない。
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