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ダンプ辻のキャッチャーはつらいよ

短期連載ダンプ辻コラム 第14回「ワルの齊藤から教わったこと」

 

1年目8勝9敗で新人王の齊藤。春季キャンプの写真だが、やはり……


にらみ合いになった


 少し前、僕が33歳の年(1975年)に、大洋に移ってびっくりしたという話をしましたよね。

 とにかくピッチャーのコントロールが適当で、コンビネーションなんか誰も考えてなかった。技術も意識も両方が足らんチームでした。

 チーム防御率もリーグ最下位で、負けまくったシーズンでしたが、最下位には辛うじてならんかった(5位)。長嶋(長嶋茂雄)さんが監督になったばかりの巨人が最下位にドンといましたからね。僕らは、それまで強い巨人しか知らんかったから、これもびっくりしました。

 そう言えば、シートノックをしていたら、長嶋さんが後ろに来て、「ダンプ、ウチは全然ダメだ。どうなってるんだ!」って、突然話しかけられたことがあります。「はあ」とだけ答えましたが、いったい何で僕にあんなことを話したのかと、しばらく悩みました。

 当時、大洋の正捕手は伊藤(伊藤勲)で、二番手が福嶋(福嶋久晃)。最初の2年くらいは、あんまり試合での出番もなかったです。故障もありましたし、ご存じのとおり、何しろ打てないもので(苦笑)。

 それで3年目(77年)かな。齊藤明雄(1年目は斉藤明雄)が、ドラフト1位で入ってきた。大商大から入った選手で、体はでかいんですが、新人のくせに、ちんたらちんたら緊張感なく投げるヤツでね。フォームも顔が別の方向を向いて投げていた。顔も怖いし(笑)、アマチュアなら、あのフォームでも威圧感があっていいかもしれんが、プロでは難しいかもしれんなと思って見てました。

 あいつの新人時代、こんなことがありました。巨人戦だったけど、あいつがワンバンを投げて僕が弾いた。その1球だけならいいけど、ずっとちんたらと投げていて、構えたミットに近づいてこない。こっちは球を捕るだけの壁じゃない。いろいろ考えてリードしていますし、それも、投手が勝てるように、いいとこを引き出そうと思ってやっているのに、逆球を投げても平気な顔をしていた。

 コロコロ転がってるボールを見ていたら、だんだん腹が立ってきましてね。それでボールを拾った後、明雄に向かって全力で投げ返した。ベテランにはなっていましたが、まだまだ肩には自信があった。ヘロヘロ球ではなかったと思います。

 では、恒例のクイズです。明雄はその後、どんな行動を取ったでしょう。制限時間は3分にしましょうか。えっ、分かるはずない? いつもいつも、あきらめが早いな。少しは考えてくださいよ、まったく……。

 あいつは一歩踏み出してパシンと捕って、こっちをにらみつけました。こっちもカッカしてるから、一瞬ですが、にらみ合いになった。

 そしたら大洋と巨人の両方のベンチから拍手が起きて、誰の声か知らんけど、巨人ベンチから「いいぞ、ダンプ!」って。張本(張本勲)さんかな。そのとき・・・

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