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廣岡達朗連載「やれ」と言える信念

廣岡達朗コラム「1988年オフ、私が巨人の監督要請を断った理由とは?」

 

マスクを着けた巨人・原監督


監督はマスクをするなと言いたい


 プロ野球は7月10日から上限5000人以内の観客を入れている。ベンチを見て気づくのは監督・コーチがマスクをしている球団と、そうではない球団がバラバラなことだ。

 なぜ統一できないのか。

 巨人の原辰徳監督はずっとマスクを着けてこなかった。それが12球団のオーナー間で問題になったらしい。マスクの是非に関しては、巨人のほうに理がある。ところが、7月24日のヤクルト戦(神宮)からその原監督までマスクを着用し始めたではないか。ひどいところになると選手がマスクをしている球団も見られる。口が悪い私は「みんなコロナに感染しているのか」と突っ込みたくもなる。

 選手はPCR検査で陰性であることを確認した上で、ゲームをやっているのではないのか。野球場は安全地帯だという前提で観客を入れた。選手がマスクをしていないのだから、監督もゲーム中は外すべきだ。マスクを着けるのは、ゲームが終わってからでいい。球場の外に出たら感染しないためにマスク着用を義務づければいいのだ。

 ユニフォームは野球人にとって礼服である。プロとして観客に見せる以上、たとえグラウンドでプレーをしない指導者であっても、しかるべきビジュアルでゲームに臨むべきなのだ。それが分かっていない指導者が少なくない。

 フィールド内に目を移すと、ここにきて各球団に故障者が続出している。新型コロナの影響で開幕が3カ月遅れて、コンディション万全のはずなのに、シーズンが始まって、やれワキ腹がおかしい、やれどこがおかしい……練習をやってきていない証拠だ。

 巨人が強いのは、フロントの勝利である。大金を投じてトレードを積極的に仕掛ける。今シーズン途中も楽天からウィーラーを獲得。監督、コーチはオールスターチームを率いるに等しい。昔の巨人は巨人流の教育をしたものだ。他球団の選手は中途半端にしか練習をやっていなかったから、巨人に来ても役に立たない。そこに巨人の値打ちがあった。いまはどうだろう。他球団で育った選手頼みになっている。ということは、巨人は成り下がっているのだ。

 原監督が巨人の監督通算勝利数で長嶋茂雄を抜いて歴代2位になった。1位の川上哲治さんの1066勝も視野に入ってきた。巨人の中だけでしか監督をやっていないのだから、いつかは抜く。しかも戦力が整っていて負けるはずがないのだから、白星が積み上がって当たり前だ。私が巨人の監督をやっていたらとっくに抜いている。しかし、それは男ではない。弱いチームにお世話になって教えて勝つ、というのが私の信念である。1988年オフに巨人の監督要請があったときは、だから断った。

 昔の巨人はリーグ優勝しても日本シリーズで負ければ監督のクビが飛んだ。それだけ次元が高かった。いまは選手権で4連敗しても監督は大きな顔をしている。

 そんな巨人に勝てない他球団の監督は勉強不足である。リーグトップの5勝をマークしている菅野智之の術中にはまっているのは、研究していないからだ。菅野の特徴は球を早く解(ほど)かないこと。ギリギリまでリリースしない。打者からするとフェイントがかかったように感じる。菅野を殺そうとしたらチームで殺さなければいけない。個人ではダメだ。どのチームが菅野を打ち崩すか、それが見どころだ。

PROFILE
廣岡達朗/ひろおか・たつろう●1932年2月9日生まれ。広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退任。92年野球殿堂入り。
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