体を張る」とは、こういうプレーのことを言うのだろう。
松井雅人が体を張ったのは6月13日の
西武戦(西武ドーム)。4回の守備だった。
一死から炭谷が中前打を放ち、二塁からスピリーが本塁に向かって突進してきた。大島がストライク送球。こういうとき、外国人選手は例外なく落球を狙い、タックルしてくる。防具はつけているが、勢いをつけてくる相手を捕手は待たねばならない。ましてやボールをこぼすことは許されない。松井雅は吹き飛ばされ、後頭部を地面に打ち付けながらもボールは離さなかった。
「あのプレーはもう、とにかく必死でした。もちろん、絶対にアウトにしようとは思っていたんですが、ああいう経験は初めてだったんです。次の日には頭にコブが出来ていましたよ」
先発マスクをかぶりながら、1回に3失点。正捕手・谷繁の後継者候補としてチャンスを与えられている身としては、焦りもあったことだろう。だが、体を張って阻止した4点目が、結果的には大きな意味を持つことになった。松井雅は途中交代したものの、味方が直後に2点取り返し、9回に追いつき、延長戦で勝ち越した。反撃の機運を高めた価値あるブロックだったわけだ。
「それは打ってくれた人のおかげなので……。でも、試合に勝てたことは自信にはなりました。あれを落としていては、ベンチの信用もなくなっちゃいますからね」
今の谷繁に松井雅が勝てるものがあるとするなら、肩の強さと若さがもたらす思い切りの良さだろう。失敗を恐れず、元気を前面に出して“ポスト谷繁”の地位を固めたい。