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中村晃 外野手 #60

一塁守備の安定感アップを求めて

 



 球宴第1戦が札幌で行われた7月19日。遠く離れた福岡、炎天下の雁の巣球場で中村晃が特守を受けていた。定位置となりつつある一塁に入り、ゴロ捕球から本塁送球を繰り返した。この日の福岡市の最高気温は32.7度。「かなりきつかったけど、悠長なことは言っていられない。練習するしかない」。時折、冷水を浴びながら、必死に球に食らいついた。

 球宴前まで4失策。6月26日の日本ハム戦(東京ドーム)では犠打処理を焦ってサヨナラ悪送球も犯した。「投手にたくさん迷惑をかけていますから、たくさん練習するしかない」。登録は外野手で、現在も外野での出場はある。ただ、開幕当初は一塁レギュラーの扱いだったラヘアが期待の打撃で振るわず、お鉢が回った。公称175センチ。リーチもそう長くない。懸命に一塁守備に取り組むが、本職に比べれば安定感に欠ける。

 それでも「一塁・中村」がスタメンに名を連ねるのは、それだけシュアな打撃を買われているからだ。開幕直後こそ右手小指のはく離骨折で約1カ月半の離脱を強いられたが、交流戦中の5月19日の中日戦(ヤフオクドーム)でプロ初の一番に抜てき。この試合で2安打を放った。本多を不調や故障で固定できず、長谷川や、時には江川、吉村といった実験的起用もあった一番に中村が定着。球宴前まで打率.314を残した。

 帝京高で四番も務め、2年夏の甲子園で本塁打も放った。高校通算60本塁打、球児だったころは大好きだった夏だ。打撃同様の安定感が守備にも出れば……。圧倒的V候補の下馬評を裏切り、前半戦は低迷したチームにあって、12球団を見渡しても珍しい「一番・一塁」が夏場の巻き返しのカギだ。
オーロラビジョン

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