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矢貫俊之 投手 #33

フル回転覚悟で勝負の夏へ

 



 ミスター・タフネスの称号がふさわしい。日本ハムの強固なブルペン陣のスパイスになっているのが矢貫俊之だ。前半戦終了時点でチームトップの40試合登板。過酷な夏場を迎えても、陰りを見せることなくマウンドに立ち続けている。その証明となる数字が防御率1.60。セットアッパーでも抑えでもなく、不確定な持ち場で驚異の安定感。後半戦の巻き返しの旗手だ。

 コツコツと積み重ねステップアップしてきた。前半戦の終盤では主に7回を任され、増井、武田久とともに勝利の方程式の一角に抜てきされた。190センチの長身からの角度抜群の直球を軸にしたシンプルな投球スタイル。高校時代は控え投手、大学は常磐大を経て三菱ふそう川崎で地道に築いてきた地力が、プロ入り5年目で開花のときを迎えている。

 オールスター明けからの勝負どころを前に発奮材料があった。7月19日からの球宴に監督推薦で初選出。第1戦の札幌ドームでデビューし、22日の第3戦では故郷の福島・いわきでの登板機会に恵まれた。

「たくさんの応援に後押しされて、いつも以上の力が出せました。オールスターは夢のまた夢だった場所でした」。4番手で7回から登板して10球で三者凡退の快投で、錦を飾った。

 そんな晴れ舞台で誓った思いがある。「もっと活躍して、支えてくれた人たちに感謝の気持ちを伝えたい。プロ野球を身近なものに感じてもらいたい」。本拠地での登板を含めスター選手に交じり、そしてファンの視線を一身に集める舞台に立てた喜び。新たな存在意義を見い出すこともできた。矢貫が粉骨砕身で激動のシーズンを全力で駆け抜ける。
オーロラビジョン

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週刊ベースボール各球団担当による、選手にまつわる読み物。

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