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長谷部康平 投手 #20

天国の両親を思い、マウンドへ

 



 試練を乗り越え、欠かせないピースになった。長谷部康平は夏以降、一軍の貴重な中継ぎ左腕として活躍中。19試合に登板し、防御率2.12(9月26日現在)。守護神のダレル・ラズナーが右ヒジの負傷で帰国すると、抑え不在の中でストッパーを任されることもあり、2セーブを記録している。

 2007年のドラフト1位投手。5球団から指名される注目度の高さだった。だが度重なるケガで、満足のいく成績を収められていない。昨年は、左ヒザの軟骨除去手術を受け、1年間を棒に振った。星野監督とは、自身が愛知工業大時代に北京五輪代表選手に選んでもらった間柄。就任当初、真っ先に長谷部のブルペンに熱視線を送るなどしたが、その期待にもなかなか応えられなかった。

 さらに8月22日には、母・泰子さんが他界。精神的にも厳しすぎる現実が襲った。だが長谷部は、それを心の強さで乗り切った。24日は告別式を欠席してチームに再合流。その日に登板し、無失点投球してみせた。登板を告げられた際は「よっしゃ、出番が来た!」と燃えた。ベンチに戻ると、ナインの温かい出迎えを受けた。そして人目もはばからず泣いた。もともとは、チームを離れることすらも拒んだというが、関係者によれば「星野監督が『行ってやれ』と言った」という。その後は着実に信頼感を勝ち取っていった。

 昨年には父親の幸太郎さんも亡くしている。天国の両親に「きょうも頑張るよ」と誓いながら、マウンドへ向かうことを心がけている。球団史上初のリーグ優勝を決め、初の日本シリーズ進出、日本一を狙うチーム。熱い心を持った左腕の働きも、不可欠だ。っ走り続ける。
オーロラビジョン

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