週刊ベースボールONLINE

東浜巨 投手 #16

“ラス投”で証明したドラ1の力

 



 誇らしいはずのヒーローインタビューに、どこか悲壮感が漂った。「まだまだ分かりません」。東浜巨が敵地・札幌ドームでそう話していたころ、Kスタ宮城では3位・西武の中村に決勝ソロが飛び出した。ほどなく4位確定。期待のドラ1ルーキーがプロ初完投・完封を達成した試合で、秋山監督就任後、初のBクラスが確定したのはいかにも皮肉だった。

 勝つしかない10月5日、対日本ハム、レギュラーシーズン最終戦。3球団競合で王会長が引き当てた、即戦力どころか新人王候補。しかし、開幕から結果を残せず、長くファームに根を下ろした。そこで土台から見直し、磨きをかけた直球がストライクゾーンの隅を射貫く。8回に鶴岡から奪った7個目の三振まで、すべて直球見逃し。8回二死、代打・中田も高めの直球で空振り三振に仕留めた。最速146キロ。被安打4の初完封には無四球の肩書きまで付いた。亜大で通算35勝、東都リーグ新記録の22完封。代名詞のシャットアウトで、9月下旬のプロ初勝利から3連勝で1年目を終えた。

「0点に抑える強い気持ちで最後まで投げた。一つ、自信になりました。最後の最後になって、チームには申し訳ない」。個人的な手応えは、チームの苦境で額面どおりに受け取れなかった。

 断トツ優勝候補のV逸は、先発陣の誤算が原因。メジャー・リーグ通算108勝のパディーヤが適応できず、左のエース大隣は手術離脱。FAで獲得した寺原の勝ち星が伸びず、昨季飛躍を予感させた武田も2年目のジンクスにあえいだ。失意に暮れた終盤戦、現れた希望の光。東浜はプエルトリコのウインター・リーグ派遣も通じ、チームとともに来季、巻き返す。
オーロラビジョン

オーロラビジョン

週刊ベースボール各球団担当による、選手にまつわる読み物。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング