開幕前、チームの最大の注目事項とされたのが内野の定位置争いだった。特に、
中島裕之の移籍によって空いた遊撃手のレギュラーの座を誰が射止めるか。千載一遇のチャンスに、内野手たちは闘争心を剥き出し、名乗りを挙げていた。前評判としては
浅村栄斗、
永江恭平といった若手の名前が有力候補として挙がっていたが、その裏で「虎視眈々と狙っています」と、爪を研いでいたのが、
鬼崎裕司だった。
2011年途中に
西武に加入し、3年目のシーズン。元々守備には定評があり、守備固めとして重宝されてきたが、先発メンバーとして試合に出続けるためには「打撃が課題」と、自ら認め、若手に混じって毎日アーリーワークから打撃向上に努めてきた。
5月28日
DeNA戦(横浜)での今季初安打をきっかけに徐々に調子を上げていく。「守備はどこでも守れる」と自負する特長を生かし、二塁、三塁、遊撃とポジションが変わる中で安定した守備でアピールし、着実に首脳陣の信頼を勝ち取っていくと、7月の球宴明けからは九番・遊撃手での先発出場がほぼ固定された。試合に出続けることで、課題とされていた打撃も明らかに向上し、九番打者として、要所でしっかりと上位打線へつなぎチャンスを広げるという重要な役割を果たした。
奈良原コーチも、「与えられたのではなく、狙って、精進した結果もらったチャンスを自分で生かして掴み取ったから、強いよ。遊撃を守らせて、エラーは3つしかしてないし。今は一番安心して見ていられる」と、賛辞を惜しまない。間違いなく、攻守にわたって、CS進出を勝ち取ったチームの陰の立役者だ。