週刊ベースボールONLINE

オーロラビジョン

武田久投手・転機の春ににじませる再浮上への覚悟

 



 5月1日の西武戦(西武ドーム)終了後だった。絶対的な守護神に君臨してきた武田久が、自ら戦列を離れた。中継ぎへの配置転換で出直してから2試合の登板は、いずれも失敗に終わった。栗山監督と首脳陣に二軍での再調整を志願。栗山監督によれば「もう1度、ちゃんとやり直したい」との意向だった。大きな決断をして自分と闘う日々を送る。

 開幕から不穏なスタートだった。抑えを任されて6年目。5試合を投げ終えたところで1敗1セーブ。防御率4.15が本来の力を発揮できていないことを物語る。追い打ちをかけるように4月8日にインフルエンザB型に感染して離脱した。シーズン序盤でリズムに乗れない船出。プロ通算107ホールド、167セーブの救援のスペシャリストには残酷過ぎる現実だった。

 過去3度最優秀救援投手のタイトルを獲得した右腕が不在の間に、代役の増井がその大役を務めた。インフルエンザからの復帰が見えたころには、新しい勝利の方程式が確立されていた。栗山監督らと話し合い、納得した上で、4月29日からの西武3連戦で復帰したが、自ら身をひいた。直近のリーグ制覇4度の輝かしい歴史を刻んだ1人で、わがままも通せたが、その選択はしなかった。

 プロ12年目で、第一線を走ってきただけに信念がある。武田久は言う。「ユニフォームを着ている以上は全力を尽くすだけ。腐ろうと思えばいくらでも腐れる。ここ(二軍)にいても一軍にいても、どの立場でも自分らしくやらないと。プロ野球選手というより、人としても腐りたくない」。自力で築き上げてきた地位を返上し、もう1度取り戻すため。全身全霊でカムバックを期す。
オーロラビジョン

オーロラビジョン

週刊ベースボール各球団担当による、選手にまつわる読み物。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング