週刊ベースボールONLINE

オーロラビジョン

加治屋蓮投手・三軍で原点回帰の1年目

 



 ベンチを出ると、小走りでマウンドへ駆けていった。帽子を取ってプレートに一礼。ドラフト1位ルーキー・加治屋蓮は、股割りしながらジャイアンツ球場のスコアボードと風を見た。「いい準備はできたけど、何か落ち着きがなく、じっとしていられない感じで」。三軍戦では投げていても、プロの打者との対戦は初めて。入団前の右足甲骨折の影響で出遅れ、「プロデビュー戦」は4月19日、巨人との二軍交流戦(ジャイアンツ)までずれ込んだ。

 甘くはなかった。毎回の被安打10で4失点。山内ファーム投手チーフコーチには「この屈辱を忘れるな」と説かれた。決め球フォークの精度と、カウント球の制球への意識。この日の最速144キロは初回で、60球を超えると140キロを割り込んだ。課題は明白だった。

 一方、収穫も多かった。メドとした90球をクリアし、プロ入り最長の5回1/3で最多の96球。社会人(JR九州)出身らしくクイックモーションも無難で、点は取られても1点ずつだ。タテに割れるカーブは効果的で、決め球として大田から2三振を奪った。

 この登板は一軍の9連戦をにらみ、先発候補のいわば適性試験として、三軍から二軍戦に格上げされてのものだった。結論は、昇格持ち越し。三軍でじっくり力をつけることになった。

「巨人戦では腕を振り切れず、配球を自分なりに考えることもできなかった」。冷静に自身を見つめていた。投球の原点に返り、腕を振ることを意識する。日の当たる場所はまだ先だ。ドラフトの形の上では、ソフトバンクの「外れ外れ1位」。最初は2列目、3列目でも、一気に駆けだすタイミングを、ひたすら計っている。
オーロラビジョン

オーロラビジョン

週刊ベースボール各球団担当による、選手にまつわる読み物。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング