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小谷野栄一内野手・崖っぷちの男が見せた意地の一打

 



 1年の流れを占うと言っても過言ではないドラマだった。3月28日、札幌ドームでの開幕オリックス戦。延長12回、苦労人の小谷野栄一が5時間2分の死闘にケリをつけ、ヒーローになった。一死満塁から三遊間を抜くサヨナラ打で、華々しく今季の幕開けを飾った。「いやあ、何を打ったか覚えていない。何人か頭をたたいてきた選手がいたので、あとで仕返しします」とはしゃいだ。

 昨季は本拠地移転後10年目で初めて最下位に沈んだ。その雪辱を期してのスタートラインだった。初めて開幕投手を任された吉川が乱調で2回までに3点を追う苦しい展開だった。大谷、中田の適時打や、稲葉の内野ゴロで点をもぎ取って1点を勝ち越し、9回を迎えた。しかし、抑えの武田久が同点とされた。延長10回に1点を勝ち越されたが、小谷野が同点打で振り出しに戻した。

 壮絶なシーソーゲームで、延長に突入してからはチャンスで奮闘し、劇的な白星へとつなげた。球団の開幕戦のサヨナラ勝ちは1989年以来25年ぶり。チーム全体に波及する付加価値が大きな働きだった。栗山監督が「栄一がよくやってくれた。大きい」と手放しで感謝するほど、チームに勢いをつける完璧な船出になった。

 全員にパワーを注入する一打にもなった。小谷野は前年まで不動の三塁の定位置が、開幕前は微妙な状況だった。中田が直前までコンバートに挑戦していたため、立場は流動的。開幕戦でその思いを晴らし、存在感をあらためて見せつけた。逆襲がテーマの1つである北海道日本ハムの選手たちが勇気づけられるプレーになった。Aクラスをキープする土台になった1勝と言えるほどの重みがあった。
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