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松中信彦内野手・代打の一振りに懸ける不惑の大砲

 



 悩み、苦しみ、もがいて一軍の舞台に戻って来た。現役唯一の三冠王である松中信彦は7月12日、日本ハム戦(札幌ドーム)の7回一死三塁、代打で立った復帰後初打席で初球をダメ押しの右前適時打とした。昨年4月6日の日本ハム戦(同)以来462日ぶりとなった打点は、火の出るようなライナーの一撃から生まれた。

「代打は初球を振ること。それができてよかった。いきなり結果も出せた。これまでのこだわりを捨てることで、2カ月間、ファームで結果が出ました」

 代打の切り札として開幕一軍スタートしたが、12打席1安打。5月19日には出場選手登録を抹消された。二軍では「代打に必要なことは初球から振れること」と元広島前田智徳氏からアドバイスをもらった。突然、試合に入り、1打席で結果を求められる「代打」。その限られたチャンスで結果を残すには、取捨選択が必要だった。

「フェード(の打球)を打つことをやめた」。バットを内側から出し、やや詰まらせ気味の打球を打つ。引っ張った球が右翼ポールのファウル側から、内側に入る打球を理想とした。この打法ができたことで、どんなコースにも対応でき、04年の三冠王につながった。ただ、40歳を超えた今季、肉体や環境は変化を余儀なくさせた。「年齢のことも考えないといけない」と現在の肉体に適合した振り方を追求。全打球を「右に打つ」ことに決め、一軍の投手のストレートを仕留めるためだけの打撃フォームを完成させた。

「1打席、1打席、ファンの人も応援してくれている。それに恩返しをしていきたいね」

 帰ってきた背番号3は、後半戦の巻き返しを高らかに誓った。
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