異国のマウンドでも実績どおりのパフォーマンスを見せた。鉄仮面の異名をとった
呉昇桓。その名のとおり、絶対に表情を崩さないストッパーは石直球を中心にポジションを守り抜いた。
「ほかの選手が頑張ってくれたから数字を残せた。でも、数字よりもチームが勝つこと。失敗することも多かったけど、いかに切り替えるかが大事だった」
チームにとって「抑え役」は最大の補強ポイントだった。韓国No.1ストッパーは開幕の
巨人戦(東京ドーム)から、シーズン最終の
広島戦(マツダ広島)までブルペンに待機しその穴を埋めてみせた。
9月24日
DeNA戦(横浜)で挙げた36セーブは、1年目の外国人投手の最多記録だった
ギャラード(
中日ほか)の35セーブを塗り替えた。27日
ヤクルト戦(甲子園)の38セーブは97年韓国人最多の
宣銅烈(中日)に並ぶものだった。
韓国の英雄、サムスン時代の監督でもある宣銅烈は、呉昇桓にとってはあこがれで、リスペクトしている存在。本人は「比べものにもならない」と言うが、1年目から日本球界に名を残す働きをしたのは間違いない。
ただ150キロ超のストレートで勢いだけの勝負を挑んでいるわけではない。直球とカットボールが持ち球だったが、日本ではファウルで粘られるケースが多いと、スプリット、ツーシームを織り交ぜる工夫をしながらシーズンを乗り切った。
クレバーなピッチングでセーブ王も確定させた。次なる舞台のクライマックスシリーズでも切り札となる呉昇桓は「同じ失敗を繰り返さない」と静かに出番を待ち続ける。