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吉村裕基外野手・強大戦力の縁の下の力持ち

 



 もたつきにもたついたペナント奪回だった。144試合目で決めたリーグ優勝。振り返ればどの1試合の重みも変わらない。ただ、通説はそうだとしても、直接対決の勝敗、中でも終盤戦の一戦の重みが大きいのも事実だ。もつれた足でゴールラインに倒れ込む約1カ月前。本拠地・ヤフオクドームでのオリックス3連戦を2勝1分けで制したのが、ライバルに致命傷を負わせたと言って相違なかった。2勝は相手先発が金子、西の試合で挙げたもの。猛牛の二枚看板にいずれも適時打を見舞ったのが、吉村裕基だった。

 初戦を引き分け、迎えた9月3日の2戦目。同点に追いついた6回、なお二死満塁で代打として送り込まれた。金子の外角直球に手を伸ばし、左中間に落とす勝ち越し2点二塁打。「とにかく『オレが行くぞ』と」。8回には左越え2ランを放ち、翌4日の3戦目、今度は4回二死一、二塁で西に先制右前打を浴びせた。前日の試合で右足首を捻挫した長谷川に代わっての六番スタメン。穴を感じさせなかったことは、巨大戦力をフル活用した今季の象徴でもあった。

 5月末に一軍に昇格。以後はケガで約1カ月、離脱したが、一軍戦力であり続けた。出場64試合。192打席はもちろん規定未満。ただ得点圏打率.370、出塁率.384はレギュラー陣に見劣りしない。

 不退転の覚悟があった。「今季は野球人生を懸けたシーズン。前は、急な出番に動揺して結果が出なかったが、今は精神的に落ち着いていると思う」。4月末に昇格し、7月に降格したきりだった移籍1年目の昨季とは雲泥の差だ。横浜からトレードで戻った故郷・福岡でのプロ12年目。未完の大器が、確かな居場所を見つけた。
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