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江川智晃外野手・「秋山2世」。指揮官との最後の戦い

 



 歓喜のリーグ優勝から2日後の10月4日。シートの色が目立つほど、人影まばらだったサンマリンスタジアム宮崎がどよめいた。ロッテとのファーム日本選手権。1点を追いかける4回一死、四番・江川智晃は左中間スタンドの中段で跳ねる推定飛距離135メートルの特大同点弾を放った。「完璧でした」と自画自賛するほどの一撃だ。あらためてその能力の高さを見せた。

 その名が呼ばれたのはもう、10年以上前になる。2004年のドラフト会議。宇治山田商高のエースは同年オフに消滅するダイエーからドラフト1巡目で一本釣りされた。同期には日本ハム1巡目のダルビッシュ(現レンジャーズ)がいた。期待の高さは05年に二軍監督に就任した秋山幸二監督に重ねた「秋山2世」の呼び声が証明していた。分厚い一軍の壁に跳ね返され続けたが、13年には打率.260、12本塁打、35打点とブレークした。昨年オフの契約更改交渉でようやく、年俸は2400万円と一軍最低保証(1500万円)を超えたが、年俸1000万円にも満たなかった時代からパーソナルトレーナーと契約。自分自身への投資は惜しむことはしなかった。不断の努力はプロ10年目で花を付けた。

 だが、今季は李大浩らの大型補強により出場39試合と再び、不遇に逆戻り。ただ、入団時の8から43に「格下げ」された男は冒頭の一撃の後「いつ、一軍に呼ばれてもいいよう、準備することが、自分にできることですからね」と笑った。辞任する秋山監督の最後の大舞台となったCSファイナルステージ(対日本ハム)から、一軍に呼ばれた。背中を追い続けた指揮官との最後の戦い。来季、殻を破ることが最高の恩返しとなる。
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