長い沈黙を破り、最後に飛躍へのきっかけをつかんだ。11試合で1勝、防御率4.11。数字だけ見れば平凡だが、
田中健二朗には確かな手応えがあったはずだ。「立場が立場なので、僕は結果を出すしかありません」。沖縄・宜野湾キャンプから繰り返してきた言葉。危機感はもちろん「今年ダメならクビ」と強く意識づけし、プロ7年目を過ごしてきた。
開幕一軍を果たしながら、3日後の3月31日に出場選手登録を抹消。「健二朗にはスーパーチェンジアップがある。あいつはロングリリーフで十分に使えるぞ」。
中畑清監督がかつてない期待感を表現した矢先、インフルエンザで離脱した。4月22日に昇格しても、同25日に
阪神戦(横浜)で3回10安打4失点。8月8日の
ヤクルト戦(横浜)でも2回1/3を4安打3失点と乱れ、3度目の二軍降格となった。
常葉学園菊川高でセンバツ優勝を経験し、07年の高校生ドラフト1巡目で横浜入団。「今年勝負しないと、僕は終わってしまう」と左腕は歯を食いしばり、ファームでは球の精度、キレを向上させることに時間を費やした。すると9月6日に再昇格し、9月23日の阪神戦(横浜)で初白星。勝ちパターンの一角に起用されるまで信頼を勝ち取り、9試合連続無失点でシーズンを締めた。
140キロ中盤の直球と大きく割れるカーブのコンビネーション。先発の左投手は今季0勝と不振を極めただけに、中畑監督は「健二朗は先発で使う」と来季構想を明かしている。「どんな状況でも、とにかくアピールを続けていきたい」。まだ25歳。長く悩まされていた左肩痛の不安も消え、ブレークの予感が漂っている。