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大隣憲司投手&松田宣浩内野手・日本一への伏線を張った“10.2”

 




 日本一への過程でキーになった試合はいくつかある。ただ重みという点では10月2日のシーズン最終戦、本拠地に2位・オリックスを迎えた一戦を置いてほかにない。直前の10戦で1勝9敗とチーム状況は最悪。スタンドとベンチに疑心暗鬼が渦巻く中、直接対決を制してリーグ優勝を決めた。それにとどまらず、今季の強さの縮図であり、その後のポストシーズンへの伏線をも張ったという意味で、計り知れない重要度があった。

 この試合、延長10回一死満塁で左中間へサヨナラ打を放ったのが松田宣浩だった。約1カ月後、日本シリーズ最終戦となった第5戦でも8回二死一、三塁から先制V打を放ち、秋山監督に「最後は意外性のあるマッチ(松田)しかいないと思っていた」と言わせた。

 先発の大隣憲司は6回無失点。自身に勝敗はつかなかったが、不調の攝津が出場選手登録を抹消され、CSへの調整に専念させられた中、重責を一身に受けての快投だった。この後、CS第1、6戦、日本シリーズ第3戦と先発し、レギュラーシーズン最終戦を含め10月は4試合で防御率0.68。難病の黄色じん帯骨化症から復帰し、鬼気迫る投球だった。

 両者は1学年違い、ともにドラフト希望枠で、松田が亜大から06年入団、大隣が07年入団。即戦力として1年目から一軍の舞台を踏み、松田は不動の三塁手。大隣は杉内、和田がチームを去った中で代えの利かない左腕。中長期的な視野に立ったスカウト戦略の好例と言っていい。総額30億円、金満ともやゆされた補強の一方で、柳田、中村、今宮ら生え抜きが柱だった。10月2日は、ソフトバンク流の育成手法の結晶でもあった。
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