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川本良平捕手・ロッテの野球を体現

 



 まるでドラマや映画のような奇跡の逆転劇だった。8月6日の楽天戦(QVCマリン)。9回表が終わって2対7と敗戦濃厚な展開だったが、驚異的な粘りで6点を奪う大逆転サヨナラ勝ちを収めた。この試合こそ、伊東監督が掲げる「全員野球」を体現した一戦だった。

 流れを一変させたのが、先頭・岡田の左中間三塁打だった。鈴木、加藤が連打で続き、連続四球、暴投、捕逸などの幸運も重なって4対7として、なおも一死満塁。今江の左翼線への2点適時二塁打とクルーズの適時中前打でついに同点に追いついた。最後は途中出場の川本良平ファルケンボーグの直球を左前へ運び、サヨナラ劇を締めくくった。ロッテでは初のお立ち台となったヒーローは「ここに立ちたくて、立ちたくて。でもチャンスに打てなくて……。やっと立てました」と声を震わせた。

「長く野球をやっているけど、こんな試合は記憶にない」。伊東監督がそう振り返るのも無理はない。9回裏に5点差以上をひっくり返したサヨナラ勝ちはプロ野球史上8度目で、ロッテでは83年8月2日の日本ハム戦(川崎)以来31年ぶり。同一球団で2度も記録したのは史上初だった。

 強打者も、剛速球を投げるエース級も何人もいるわけではない。だからこそ、指揮官は就任直後から「俺たちは強くない。だから、束になって戦うんだ」と繰り返してきた。最後の最後まで粘り抜くのがロッテのプレースタイルだ。

「年俸が何百万円の選手でも、何億円も稼ぐ選手に勝てるのが野球なんだよ」というのが伊東監督の口グセ。滅多にお目にかかれない大逆転劇は、チームの目指すべき方向性を再確認する試合だった。
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