ホーム最終戦の10月2日の
日本ハム戦。勝たなければ最下位が確定するという一戦だったが、先発・牧田が2回につかまり、7失点でマウンドを降りる荒れた展開となった。だが、その裏の攻撃でチームは意地を見せた。先頭の
メヒアから森、秋山と出塁。無死満塁のビッグチャンスで打席が回ってきたのが、プロ7年目の
梅田尚通だった。
今年5月に一軍デビュー、ここまで全4打席無安打だったが、この打席で初球を迷うことなくフルスイングすると、ボールはライトスタンドへ。プロ初安打が満塁本塁打という快挙に「ちょっと出来過ぎかなあ」とはにかんだが、この1本によって、チームはもちろん、意気消沈しかけていたファンも一気に勢いづいた。この回、打者一巡すると、さらにメヒア、森のタイムリーで加点。7点差を振り出しに戻し、その勢いでチームは劇的な逆転勝利を果たしたのだった。
価値あるグランドスラムは、梅田の今後の可能性を大きく広げたと言っても過言ではない。昨年までのプロ6年間で一軍経験なし。結果を出すべきリミットが迫っていることを、自分自身が誰よりも感じていた。今年5月4日には念願の一軍初登録を果たし、2試合4打席に立ったが、同14日に右ワキ腹痛で離脱。せっかくのチャンスを逃していたこともあった。2度目のチャンスとなったこの試合では、初先発出場の最初の打席で能力を最大限に発揮し、自ら選手生命をつないだ。
田邊新監督は二軍コーチ時代から、そのパワフルな打撃センスを評価し、個別練習に付き合うなど目をかけてきた。来季、巻き返しを誓う指揮官の下で主戦力となって恩返しできるか。25歳、飛躍を期する。